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創刊号 2008.07.24

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 「はじめに」
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1.プロローグ

 最近、私の講演会には、以前より歌手、俳優志願の方のほかに、
ヴォイストレーナーや指導者、演出家、映画監督の方などがよくいらっしゃいます。
ベテランの役者、お笑い芸人、プロデューサー、インストラクター、講演家など。
さらに一般の方のなかにも、人前で話す方、声に関心のある方なども増えてきて
います。高齢者から、中高校生まで、声に悩んでいる人も増えました。

 そこで一様に「ヴォイストレーニングがよくわからない」というのです。多くの本や
セミナーが世の中に出ているに関わらず、これでは逆に混迷を深めているようにさえ
思われます。事実、ワークショップやヴォイストレーナーの研修や、劇団、
ベテラン役者らに話をしにいくと、そこでは多くの方が自らの声もですが、他人に
声を教えることについて、悩んでいるのです。どうも声について、何か根本的に
勘違いしているのでは、もしくは声そのものが特に若い世代において変わり、また
客の求める声も変わってきたのではないか、などといった疑問も少なくありません。

 そういう人を念頭において、これはヴォイストレーニングに関心のある人、
全般のために述べました。研究所へ寄せられる多くの質問のうち、トレーナーの
を専ら取り上げていきます。(ここにも、最近は何人もの若いトレーナーが学びに
いらっしゃっています。)

2.指導における課題

 近年、声に関する書物が増えました。ヴォイストレーニングはカルチャーセンター
でも人気講座の一つとなり、ヴォイストレーナーやヴォイスティチャーを肩書きに
する人も増えました。それはうれしいことなのですが、現場では却って、混乱を
きたすようになっています。
 あまりに安易に自分の体験だけをもとに述べられた本も多くなり、とんでもない
誤解や誤用まで引き起こしています。この分野でもっとも多く出版してきた
私自身は、少なからず責任を感じています。

 私は出版という相手(読者)を知らずして、トレーニングを述べることには、
慎重に、本での限界を知って対処してきたつもりでした。誰でも何でもできる
ようには、書いてこなかったつもりです。それでも現実には、誤解、誤用を、
まぬがれないことも知りました。そのため、5~10年ごとに改訂版、あるいは
新版にて表現を改め続けてきました。

 トレーナーの問題もあります。これについては後で詳しく触れますが、
一言でいうなら、自分一人でしか指導をやっていないために、あまりにも客観的な
検証に欠けているのではないかということです。技術を身につけた当の自分を元に
考えるのは当然ですが、あまりにも相手の一人ひとりの個人差に無理解のまま、
自分と相性のあった人にのみ、あてはまるやり方で、改善改良をしていないと
思います。それは私の読者で、私の本を指導に使っていただいていることでも
懸念していることです。

 とはいえ、若い方が教えるのは、新しい時代の波ですし、いろんなトレーニング
メニュが公にされるのも、よいことです。何事であれ、いろんな材料はあった方が
よいと思うからです。そして、現場での経験を基に、どんどんと本当の力をつけて
いただきたいと思っています。すると、私自身も安心して、本来の研究や活動に
一層専念できるようになります。

 とにかく長年にわたり、多くのことを、多くの人と試みてきた私の経験を述べる
ことは、お役に立つのではと思っております。
 受講を望む人の層が思いの外、広がっているため、いつも未経験の相手に
あたり、試行錯誤でやっている現状では、まだまだ課題を残したままですが、
その課題も明らかにしていくことにしました。この分野に欠けているのは、
声という幅広く深い分野に対して、多くの専門家との協力体制に他ならないと
思うからです。

3.ヴォイストレーナーとは何か

 私は、ヴォイストレーニングをする人は、すべからく、自らが自分のヴォイス
トレーナーであるべきと思っています。これは、私がヴォイストレーナーとして、
ヴォイストレーニングを語るのではありません。
 私にとっては、ヴォイストレーニングとは何ぞやと、ヴォイストレーナーとは
何ぞやということは、そう簡単に述べられないからです。
 この分野を私が代表できるものでないのと、私自身の気づかぬ一人よがりを
防ぐため、医者と音声学者にアドバイスなど協力をお願いしています。

 私は、これまでたくさんのヴォイストレーニングに関する本を出してきました。
今から二十年前に、ギターやピアノの本の棚があるのに、声に関する本は
ほとんどなかったのです。あっても声楽の本がほとんどで、あとはスピーチ、
話し方の本、どもり矯正の本、のどの病気の本などでした。
当時は、発声やボイストレーニングといわれていました。

 そこで私は、ヴォーカルやヴォイストレーニングという棚ができるところまでは、
入り口をつくろうと思いました。幸い、多くの方の賛同を得てヒットを重ね、
その後、いろんな出版社がこぞって出すようになってくれました。
他のトレーナーが出版しやすくなったくらいの礎にはなったつもりです。
私の一連の本によって、多くのトレーナーの受講者も増えたとの嬉しい知らせも
いただいています。また、私のところのトレーナーなども、ほとんどが10代の頃、
私の本の愛読者であったとのことで、並々ならぬ責任を感じています。

4.私の指導歴について

 私は、ヴォイストレーニングの本をもっとも多く書き、その間も世界中を
飛びまわり、声やトレーニング法をサンプリングする一方で、日本で最も多くの
レッスン生を抱えたヴォイストレーニング専門の研究所を主宰していました。
そこではポップスから声楽家まで、複数のトレーナーを一人の生徒につける方法で、
2年から長い人で10年以上みてきました。在籍人数、およそ350名で20年以上です
から、本当に多くの人の声と接してきたわけです。

 一方で、これまでずっと、各専門家と声を科学、医学、身体の面から声という
ものにアプローチしてきました。現在は他のトレーナーやスタッフとともに、
日本でのトップレベルの演劇、放送、ミュージカル、お笑い、歌手、俳優、声優、
芸能歴30年以上のベテランや、ミリオンセラー歌手まで、初心者からいくつかの
学校のヴォイストレーナーの指導までを行なっています。一般の方やビジネスマンや
VIPのためのヴォイスティーチャーも多くこなしてきました。

 研究誌としての会報(月に1冊、本1冊分)は約200冊、講演会は500回以上、
レッスンは何千回? そこで答えてきた質問は、何千か何万か数えきれません。
そこから、現場での実践のプロセスをふまえ、できるかぎり本質を落とさず、
ヴォイストレーニングに対して、何冊もの本をまとめてきました。

 最近、私は多くをトレーナーやスタッフに任せ、自分でしかできない仕事を中心に
絞り始めているからです。私自身のやってきたことを自問し、次のように一覧化して
みました。よくトレーナーの仕事の内訳を聞かれます。そのお答えにもなっていると
存じます。

1.声の講演会を500回以上、開き、毎回2時間近い質疑に応答してきた。
2.多くの本を執筆し、読者の問い合わせに答えてきた。
 (ここ5年のQ&Aは1000以上、参考:「ヴォイストレーニングQ&Aブログ」)
3.ホームページを開設し、そこへの質問に答えてきた。
4.ヴォイストレーニングのメルマガを最初に発行し、7誌を配信してきた。
5.専門学校や大学、カルチャー教室、劇団ワークショップでの講座をやってきた。
6.ヴォイストレーニング専門の研究所(ブレスヴォイストレーニング研究所)を自ら
  運営してきた。そこで多くの人(他のトレーナーのところをやめた人を含む)を
  前向きに引き受けてきた。
7.研究所と他のスクールでのトレーナーの選考、管理を担当し、膨大な生徒の
  レポートとトレーナーの報告書をみてきた。
8.日本国内外の専門書に目を通してきた。(研究所のライブラリー)
9.医者、科学者、言語学者などの専門家、研究生と国内外の声の分析を
  行なってきた。
10.芸人から声優、役者のデビュー前から、プロのベテラン歌手まで指導をしてきた。
11.多くのヴォイストレーナー、指導者の悩みに答えてきた。
12.ヴォーカルや役者の学校の立ちあげ、トレーナーの講習をやってきた。
13.トレーナーになる人の、それ以前とそれ以後をみてきた。
14.プロ歌手となる人の、それ以前とそれ以後をみてきた。
15.通信教育をやってきた。
16.教材をつくってきた。
17.マスコミ取材、TV、ラジオ、雑誌に出てきた。
18.会報やマニュアルを出してきた。
19.音大のトレーナー、プロデューサー、海外のトレーナーに指導を受けたり、招いてきた。
20.声以外での、さまざまな提言を業界や企業などにしてきた。

 考えてみると、よくこれだけ声の周辺のことと、そのQ&Aに人生を費やしてきた
と思います。HPを見ていただくと、毎月、本一冊分の研究誌(サンプル0707)を
出して続けていることなど、その歩みがわかってもらえると思います。

5.音声教育との関わり

 私がこのようなものを書くときには、もう同じことを何十回、何百回、
聞かれたくないというのが極まってということも少なくありません。
しかし、それだけ多くの人が同じ問いを発しているのだから、早く伝えたいという
気持ちもあります。

 もう一つは、二十年の経験を経て、今の時代において、ヴォイストレーニングが
どういう意味をもつか、というところからヴォイストレーニングを考えてみたかった
ということです。ヴォイストレーニングをしたい人や、ヴォイストレーニングを
している人、特に最近多い、ヴォイストレーナーも念頭において書きおろしました。
 私も、これだけの経験のなかに、多くの先達の、方法、考え方も参考にして
きました。これについては、いずれ、機を改めて述べたいと思っています。

 国際的に、あるいは日本では高いレベルのプロと長年にわたってやってきた
私の経験も、ヴォイストレーニングをやっている人やこれからのヴォイストレーナー
には、参考になることと思います。また学校の先生向け教育雑誌の連載が
一巡して、幅広く声の教育に携わる方々と対談できたことも、大きなプラスに
なりました。本書が結果として、より多くの人材を育てられる一助となりましたら、
筆者として望外の喜びです。いつもながら、皆さんの忌憚のないご意見、ご批判を
お待ちしております。

6.本メルマガの内容

 内容の中心は、ヴォイストレーニングの本を読んでのチェックや、
レッスン指導での注意点です。さらに目的やレベルの違いによるレッスン、
トレーニングのそれぞれの是非を述べています。これまでヴォイストレーニングの
功罪にまで踏み込んだものは、ありませんでしたが、これは、ヴォイストレーナー
ともに、ヴォイストレーニングを受けたい人、受けている人の盲点についても述べました。

 また、これは同時に、自らへの反省の書でもあります。私自身のやってきた、
そしてまたトレーナーたちと試行中のレッスンスタイルの変遷をも、付記しました。
二十年以上やり、十数名の有能なトレーナーを有しておきながら、未だグラミー賞
アカデミー賞の受賞者すら、一人も出せていない私の痛恨の歩みです。

 大きくは、4つの内容を入れています。
1.ヴォイストレーニングには何が本当に必要か。
2.ヴォイストレーニングの本質とは、何か。
3.ヴォイストレーニングの目的は何か。
4.ヴォイストレーナーをどう選び、どう使うのか。

7.ブレスヴォイストレーニングについて

 初期の私の本には、私自身は「ヴォイストレーナーでない」と明記していました。
私自身、芸大の先生と行なってきたメニューを中心にしつつ、しだいにポップス
向けに変容してきた方法を、ブレスヴォイストレーニングとして、理論立てて
打ち立てたのは、二十年以上、前のことです。その頃は、ヴォイストレーニングと
いう定義もなく、漠然としていました。そのため、そのことばを経験の未熟な
私がストレートに使うのは、ためらわれたのです。

 知っておいていただきたいのは、いかなる方法も、その時代の必要とともに
あるということです。(その頃は頭声ばかりが発声レッスンの主流でした)
それに対し、私は言語音声力の強化にベースを置いたのです。
つまり、歌唱発声のそのまえのところです。ですから、役者や声優も早くから
いらしていたのです。

 世界的な名オペラ歌手などが発声法などを明らかにしているのに対し、
そんな身分でない私には、発声といっても私なりに捉えたものでしか、ありえないとの
思いもあったのです。(ところが、もともと生まれ持っている楽器に恵まれている人の
多い歌手やトレーナーが、そうではない多くの人、ヴォイトレにいらっしゃるのは、
発声に困っている人、つまり持っている楽器そのものに問題があることも少なくない
のに、声の使い方のみの問題だけで指導している人ばかりなのです。

 前提が崩れていては、いかにすぐれた方法でも、逆に役立たないといえるのです。
私はプロを多くみてから、一般の人と接したので、また今もプロともやっているので、
とてもよくその差がわかるのです。)
 声楽以上に、ポピュラーでは十人十色に全く違うやり方で行なわれていたからです。
これは今も大して変わりません。つまり、私自身が責任をもてるのは、私のやり方に
すぎないから、あえてブレスヴォイストレーニングという別名をつけたのです。

 それでも私の願いは、スポーツのように、これもある程度一般化されることです。
今のところ、多くのトレーニングマニュアルは、そのトレーナーの名をとって、
○○(氏)流としか、なっていないように思います。
 しかし、私が自分の方法に、福島という名をつけなかったのは、私自身が
創案しても、その後、よりすぐれた人が加工、改良して、完成度を高めて
もらいたかったからです。すると、いつかはきっとよりすぐれた人が行なっている
トレーニングと同じところに行きつくと信じていました。
事実、そういう方向になっていったのです。

 ともかくも、トレーニングの目的に対して個々に異なる楽器(体や声帯)、
感受性、創造性をもって生まれた一人ひとりの人間をいかにうまくセッティング
するかということを忘れられてはならないのです。
 最初、私は、プロの個人レッスンだけでしたが、しだいにより深く声と表現を
追求したくなり、一般の方のグループレッスン(全日制養成所―ライブハウス式
スタジオ)、そして、またプロの個人レッスン中心(研究所では、一般の方の
個人レッスンも)と、移っていきました。

8.私のヴォイストレーニング

 それでは、ここで私たちが実際に指導しているレッスンの内容をお伝えしましょう。

1.声のこと(発声ポジション)
2.表現、歌としてのアドバイ
  1.自分の作詞作曲の歌
  2.ヒット曲
  3.課題曲
3.デッサン、フレージング
  1.課題曲のフレーズ
  2.音楽を入れ込む(月に15~20曲)
  3.そこでフレーズを選ぶ
  4.メロディ、ことばを耳でコピー、外国語も耳で聞いたままとる。
  (人によっては楽譜を渡す)
  5.テンポ、キー、フレーズでの切りとりを自ら決め、選択しつつセッティング
   する。
  6.自分のデッサンを4本(15名)、8本(30分)くらい選び、実践させていく。
  7.テープで評価する(整理し、編集する)。
  8.構成、展開をノートにつける。
  9.レッスン当日に備える。
  10.メールでのQ&A、レポート提出(1ヵ月30日分でもよい)。
4.声楽、発声、ヴォイストレーニング一般、歌唱は、トレーナーに任せる。
  (時間を長くとる)
5.その他、必要なことは本人との相談の上、最適な材料を与える。

 私のレッスンは、いつも変化と進化してきました。かつての放任主義的指導の頃、
生き残った人が一番力をつけたとも思いますが、それでは残れない人の多い現在
では、やり方も随分と変えてきたつもりです。さらに、共通のこと、人と違うこと、
などを私自身、仮説でなく、実の経験で何人もの人を10年以上みることができ、
判断できるようになったのは、大きな力となりました。そこで得てきたこと、
そして今も得ていることを受講されている方に差しさわりのない範囲で、公開して
いきたく思っています。それによって学べる人も少なくないと信じているからです。

 どこにも、絶対的な方法はありえないからこそ、自らの目的と自らの資質を
知りつくすことが、何よりも大切だと思うからです。それと、日本人にとっても、
弱点である言語音声力をつけることを忘れてはなりません。
(これについては、近日中にまた詳細をオープンにいたします。)

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