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第1号 2008.08.02

1.ヴォイストレーニングは必要か

 まず、一流のアーティストで、ヴォイストレーニングだけでそうなったなどと
いう人は、ほとんどいません。(海外のすぐれたトレーナーは、一流の力をもった
有名人を扱うのですが、その力をつけたとは必ずしもいいがたいのです。)
役者は養成所で体験したりしますが、現場で必要に迫られて、声もその使い方も
よくなることが多いのです。

 多くのヴォイストレーニングは、調整やケアが主であり、のどを守る力になって
いても、力をつけるにはためになっていないからです。つまり、声の出る体という
のを想定して、体を鍛えてプロに変えるという発想がないのです。

 少なくともアーティストには、過酷なスケジュールに耐えたり、安定したライブが
できるようにという将来的なことに備えて、ヴォイストレーニングをする人は、
少なくありません。日本では珍しく、デビュー時より格段によくなった、
郷ひろみさんなどは、毎年アメリカへ行っていました。
その理由は、ヴォーカルに必要とされる基準と、日本人のヴォーカルへの評価
(というより、評価なき対応)のレベルの低さにあります。

2.ヴォイストレーニングに肝心なこと

 イチロー選手が、「俺のように打てば5割打てるよ」と子供に教えても無理
でしょう。それと同じく、本当に自分が努力して得たことを教えたら、
安易に他人はすぐできるようになるような勘違いを善意でさせてしまうのは、
スポーツのように結果がわかりにくいだけに、始末が悪いともいえるのです。

 たとえば、そのレベルでスランプになっても、心身をリラックスして、鍛え直して
元の状態に戻せば、プロとして通用するわけです。でもそれは、そこまで何年も
かかって、体と感覚(筋肉も勘もイメージ)を全部作ってきたからで、
そういう条件がなければできません。

 その条件(主として感覚と心身のコントロール)の全くない人が、
トレーニングをやれば、プロの世界で通用するというのは大きな間違いです。
しかし、ヴォイストレーニングの中では、そういう錯覚があたりまえのように
行なわれているのです。

 また、トレーナーが歌ったり、声を出したり、自分のコンサートによんだりという
時間ばかりが中心でも、その人と共に過ごすことで力がついていくような気になる
人が多くなりました。ゴスペルブームにのって歌を始めた人などが、講演にも
よくいらっしゃる。しかし、その先生のやられていることは、その人個人の
実績なのです。そこにいても、ほとんどの場合、力がつくこととは関係ありません。
要は、そういう人についているのに、プロとしての一声、一フレーズ、
そして個人の作品のできがどうかという肝心のことが深まっていないのです。

3.ヴォイストレーニングとは何か

 「ヴォイストレーニングとは何か」・・・
この質問には定義をしなくては答えられないのです。
そして、定義によって、変わるものなのです。

多くの人には、
 1.呼吸のトレーニング(腹式呼吸
 2.アエイオウという母音での共鳴練習(レガートの発声練習、ヴォーカリーズ)
 3.高低の音階練習(スケール練習、ドレミレドの発声練習)
といった従来の発声練習(声楽)のイメージが強いと思います。

 しかし、役者や声優、アナウンサー出身のトレーナーなら、異なってきます。
のどの障害に対する音声医のヴォイストレーニングもあります。
「ヴォイストレーニングとは何か」という問いには、あなたにとって必要なことを
知って、自分で定義をしてください。ヴォイストレーニングは何のためにするのかを、
決めるのは、あなたです。

 巷では、声量や高音発声、広い声域づくりを目的にしているトレーニングが
多いようです。ちなみに私は、ヴォイストレーニングを「いかにイメージに対して、
繊細にていねいに声を扱うかを習得するためのすべて」と考えています。
結果として、声の自由度、柔軟性を得る、声の表現への可能性を広げるために
するものと思っています。

4.ヴォイストレーニングの必要性と可能性

 私は、「トレーニングは、常にそれが何のためにやるのかを考えること」と、
言い続けています。もちろん、それを何に使うのかは、それぞれの人の自由です。
ストレス解消、ボケ防止などに使うのも大変に結構です。
「効果が出るのか」に「はい」と答えるのは簡単ですが、考えてみてください。
しかし、いくら考えても、やってみなくては、何事もわかりません。
これは、まさに「英語を勉強すると外国人と話せるようになりますか」というのと
同じような質問だからです。

 ただし、声帯を中心とした発声器官自体をトレーニングで変えられることも
あります。変えなくても、声の出し方で変えることもできます。
心配する必要はありません。心配することが、発声を一番悪くするのです。

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