第8号 2008.09.20

○トレーニングの考え方

 ここにとりあげるもののほかにも、すべての疑問に対応できるための、
基本的な考え方を示しておきます。

1.トレーニングは、器を大きくし、可能性(限界)を広げていく。
  歌は伝えるための器のなかで切りとり、作品として最高のものに編集していく。
  花壇づくりと活け花のような関係。
2.どんなメニューがよいかは、目的にどう結びつけるか、目的に結びつかないと
  本当には使えない。それぞれの必要性に対して位置づけがある。
3.理想のトレーニングは、問題を発見するためにメニューをセットして、
  発見したらそれに対応をとる。その場での処置法と根本的な対応とは、異なる。
4.体に教え込み、意識せずともやれるようにしておかないと、何事も対応できない。
  正確さが欠けたり、遅れる。
5.自分で必要と感じて初めて意味がある。全身と全精神で捉えようとしたときに、
  どんなにそういうものが必要か、どんなに欠けているのかを実感することから、
  心身と結びついてくる。
6.目的と優先順位をはっきりさせる。トレーニングは部分的な目的達成のために
  やる必要悪である。早く効果を期待すれば、無理がくる。
  常に二つ以上の問題が矛盾して、そこにチェックのためのメニュー(認識)と
  解決のためのメニュー(トレーニング)ができる。
7.対立させられる二軸に対しては、論理的にその間にメニューを詰めていくと
  解決できる。少なくとも、問題がより明らかになり、より細かなメニュー設定が
  できる。矛盾を詰め、その間にメニューをおく。

たとえば、
例1)息を強く吐くと、リラックスできない。それは、強い息をリラックスして吐く
  必要があったとしたからで、その必要性の是非は、もう一つまえの問題です。
例2)高い声を強く出したい
  「高い声=○、強い声=×」と、「高い声=×、強い声=○」の間に、
  トレーニングをおく。これも、そのまえに「高い声を弱く出す」という
  全く別の必要性がある。
例3)響かせると発音がはっきりしない
  まさにこれは、「響く=○、発音=×」「響く=×、発音=○」、
  それを両端におき、そのなかにメニューをつくります。
  その真ん中に「半分よく響く=△、半分よく発音できる=△」がくる。
例4)アエイオウで「イ」がいえない


 同様に、aeiouで、a、e、o、uがよいなら、ai、aai、aei、aieなどで
詰めていくのです。
トレーナーは音声学などを利用して、より早く適切なメニューをつくります。
ただ、現実の発声、発音から聞いて、メニューを設定する方が効果的です。
すぐれた医者の診断は、マニュアルにまさるのです。

8.正誤ではなく、できたら、まずあなたが惚れ込むだけのものにする。
  それで終わるのではなく、すべてはそこからである。
9.トレーナーにつくのは、問題をはっきりとさせ、解決の糸口をつけるため、
  自分自身で自覚できるようになることと修正できるようになるためである。
10.結果として声に表われ働きかけるものを、マニュアルや方法論としてスタート
  すると、本やトレーナーに一方的に与えられ、いくら積み重ねても、大して力に
  ならない。
11.できるというところでなければ、トレーニングはできない。できないところは
  できない。できると思っているところがきちんとできていないから、できない
  ところが生じる。そうでないところは、それ以上のところは不要のことが多い。
12.メニュは、どういうことのためにやっているのか、わかっておくこと。
・それぞれの問題は、全体の一つの要素にしかすぎず、多くはそれを解決せずとも
 他で代用できる。
・解決にこだわることが、常に全体のより大きな問題を見失ってしまうものである。
13.表現力は、日常のものをパワーアップした上に成り立つ。声は歌、歌は
  ステージで応用して正すこと。出口という目的に対して、セットすること。
14.多くの問題は、何事もできないよりはできた方がよいというくらいで、
  本人が思っているほど大したことではない。
15.「より高く」「より大きく」「より深く」などの「より」というのは、
  「今より」ということだから、
  今できないことなのである。そうでなくては、問題にならない。
  だから、今、問題としても、すぐ解決すべきことではない。
16.形をとり、実を入れないより、実から形をとること。
17.問題として、すぐに解けたら、それはごまかしやクセがついたということで
  ある。
18.人間には、限界がある。それゆえ、作品にできる。
19.作品にも限界がある(時間、予算、設備、スタッフ、才能)。
  それゆえ、作品の形にできる。
20.あなたが売れるものをもっていたら(つまり買い手がいるもの)、
  プロになれる。プロとは、制作者であり、制作能力が問われる。
21.あなたのもっているものが一つあれば、まわりの才能、さらに最新技術を
  駆使することで、補えることは多い。
22.すでにあなたは充分にもっている。ただ、使えていないだけだ。
23.わかりやすいものなど、所詮、わかってしまえばつまらないものにすぎない。
24.わからないうちは、わからなくてよい。すべてわかることはありえない。
25.決して、声や歌のせいにするな。
26.決して、他人のせいにするな。
27.要は、あなた自身のイメージとテンションからなのだ。

○「自分の好きにやればよい」という人には
 それでよいでしょう。ただ、私に接する人は、好き嫌いを超えて、最高のもの、
自分で気づいていない本当の才能を引き出すことを求めてきます。
私も長時間、年月をかけたら、誰でもできることよりも、その人しかできないことを
求めていきます。 あなたが好き嫌いで勝手にやるようなものは、
必ずしもオリジナリティや個性として力をもつほど深められていないからです。

「世界のことを知るよりも、自分自身を知ることの方がはるかに難しい」(ゲーテ

「汝自身を知れ、汝自身を知れば、今までの汝をのりこえられる」(ソクラテス


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<「トレーナーの選択」に関するQ&A>


QVT.個人レッスンで、発声教本やイタリア歌曲より、
今流行の曲や自分の曲をやりたいのですが。

A.若い人ほど、そういう抵抗を感じてしまうことが多いでしょう。
でもそれはやってきたことなので、大した勉強にならないと思います。
ベースの音楽が入っていないし、ただ、好き嫌いだけで動いているからです。

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