第9号 2008.09.27

○似ていることのデメリット

 イメージと構成力、つまり、曲を受けとめ膨らます想像力、自分の思いを
声として展開する創造力の不足でしょう。音のつなぎ方一つから、
いろいろとアレンジして表現する練習をしましょう。
 いずれにせよ、似ている、似ていくのは、あなたの存在価値、歌の作品価値が
ありません。どれだけ、他の人と違っていくかという勝負なのです。

 コピーから入ると、どうしても元のヴォーカリストの歌い方がしっくりくる気が
します。それではあなたが歌う必要などなくなるのです。あなたが歌うのは、
もの真似をするためではないはずです。他の人は皆、あなたの個性、
あなたらしい歌、あなたにしか歌えない歌を聞きたいのです。
コピーを聴かせるのはもったいないです。
自分の土俵で勝負しないと、最初は受けがよくとも、いずれやれなくなるのです。
大変でも、今は自分の土俵をつくってください。

 楽譜通りに伴奏テープをつくり、オリジナルを聴く前に自分で歌いこなしてみる
ような練習も効果的だと思います。もちろん、似てはいけないが、結果として
似ているのはかまわないのです。一つの歌を、解釈をして表現する方向は、
あなたがすぐれていくにつれて、プロがイメージするものと似てしまうからです。

 自分の好きな人のように歌うと、自分に心地よい。でもそれではファンです。
トレーナーもそういう判断をする人が少なくないので、やっかいです。
それが、特に業界受けするからやむをえないともいえますが。
それをさけるには、同じ歌を多くの人が歌うのを聞いて、個性があるとは、
似ているとはどういうことなのかを、知る方がよいでしょう。トレーナーの真似
できる歌い方になっていないかというのも、よい判断の一つです。

○“まね”のチェック

 よくいるタイプをあげておきますので参考にしてください。
歌には、自分の表現を自分の呼吸で声としてとり出すことが基本です。
その作品は、リアリティ(立体感、生命力)に、あふれているかどうかでしょう。
しかし、次のような場合も、状況さえそぐえば、大化けすることもあります。
歌というものは、おもしろいですね。日本人(客)の好みも反映されます。

◇唱歌コーラス・ハモネプ風・・・感じられない、得意ソウ、“うざい”
 唱歌風の歌い方は、発声トレーニングを受けてきた人に多くみられます。
共鳴に頼りすぎて、ヴォリューム感やメリハリがない。一本調子、正確さだけが
取り柄で、おもしろみがない。つまり、誰が歌っても同じ、その人の個性や
思いが出てこないのです。

 合唱団、音大生、プロダクションの歌手、トレーナーなど、正規の教育を
受けてきた人にもよくみられます。音楽を表現するのに必要なパワー、
インパクト、リズム・グルーヴ感がないのです。生まれつきの声のよさだけに
頼ってきた人にも多いです。先生の言うままにつくられた“日本では、
歌がうまいといわれる”優等生タイプです。

◇アイドル型・タレント型・・・やっていることがわからない、カワイイ、
“ガキっぽい”
 しゃべり声で、甘えた感じで歌う。喉声にならないように浮かし、
やや発音不明瞭で鼻についた声です。タレント型ヴォーカルに多くみられます。
他の人がやると、くせのまねにしかなりません。カラオケでは目標とされています。
 とはいえ、高度なレベルでは、ニューミュージックやJ-POP、演歌の歌い手など、
声が高く生まれついただけで、作詞・作曲・アレンジ力で通用している
ヴォーカリストにも多いようです。他のタイプの人には、真似て百害あって
一利なしです。

◇役者型、喉シャウト型、語り調・・・のれない、くさい、“くどい”
 ことばを強く出し、せりふとして感情移入でもたせます。個性やパフォーマンス、
演技からくる表現力でもたせているため、呼吸がことばに重きをおく反面、
音楽性、グルーヴ感に欠けます。存在感とインパクトの強さで、
個性的なステージになります。シャウトもどきの声でやる人は、
調子をくずしやすく、選曲のよしあしで良くも悪くもなります。
もう一つは、語り調で、雰囲気づくりにたけ、ぼそぼそと歌うタイプです。
テンポ感、リズム、ピッチに、甘いです。

◇日本のシャンソン風、ジャズ風・・・格好ヨサソウ、インパクトがない、
“たいくつ”
 上品さや気品を上っつらだけをまねた、自己陶酔っぽい歌い方です。
中途半端に声楽家離れしない人や役者出身者に多いのが特長です。
それで通じた昭和の時代は、古く遠くなりつつあるように思います。
 鋭い音楽性、深くパワフルな声のない語りものの日本のジャズもまた、
雰囲気好きの日本人に期待された結果の産物だったのでしょう。
センスとパワーの一致を望みたいものです。

◇日本のオペラ、カンツォーネ風・・・押し付けがましい、自慢げ、
声だけ“うるさい”
 声の美しさ、響きに頼った歌い方で、個性や表現の意志に欠けます。
声量だけは感じさせるのですが、一流の声楽家や本物の歌い手と比べられて
聞かれるので、マイナス面をみられがちです。発声や技術が前に出てしまい、
人間性が感じられない。不自然な表情や動きになります。

◇日本のブラック、ゴスペル、ラップ風・・・なんか変、みせかけ、
ちぐはぐ“ウソッポイ”
 洋ものを真似て、声をハスキーにしたり、やわらかく使う表面的な歌い方に
終始しています。日本人特有の雰囲気、甘さ、コミュニケーション先行で、
厳しさやしまりがないため、おもしろさに欠けた退屈なものになりがちです。
精神性が感じられず、洗脳されたような薄気味悪さがあります。ビジュアル、
笑顔、一体感、振りなどの演出に逃げ、個としてのパワー、インパクトに欠けます。
しかし、不思議に日本人はそういう歌い方を評価するようです。

 こういった多くの歌い方は、世界で受け入れられたアーティストの個性や雰囲気を、
表面的に真似て、インスタント加工したものです。体、呼吸、心、音といった
根本での声、歌、音楽の生まれる条件を、踏んでいないのです。
ピカソシャガールの絵を真似て、上手といっているようなものです。
それで通用してしまう日本の状況が、私は有望なヴォーカリストにまで才能を
甘んじさせているように思います。トレーニングとして、自分の声や歌を知る
材料として出してみました。

○オリジナリティの価値

 歌のオリジナリティは、あなたの持ち味を生かせるかどうかなのです。
はじめてやったからとか、他人と違うことをやるのがオリジナリティというのでは
ありません。人と同じことをやりながら、そこに埋もれず、その人らしさが光る、
というのが、本当のオリジナリティというものでしょう。何を歌っても、
曲や歌の中にあなたが埋もれてしまわないこと。それだけのものをあなたはみて、
自分の声や声の使い方を磨いてきましたか。

 あなたは自分の最高のセッティングが、選曲、テンポ、キィでわかりますか?
 あなたと曲とが本当に一体になって迫ってくる、存在感とパワーが感じられる
ステージに、人は心を打たれるのです。このパワーの源がオリジナリティなのです。
 世界にはたくさんのよい曲があります。それをオリジナルに歌う練習が、
力をつけると思います。テンポもキィも変える。スタンダード曲をオリジナルに
歌唱するところから入る、オリジナルに編曲、作詞し、リカバーするのは、
もっともよい練習です。

 とにかく「誰かのようだ」「聞いたことがある」「古い」と思われるものは、
求められるオリジナリティとは違うのです。とはいえ、それぞれのスタイルで
プロとして通用している皆さんは、それぞれによいのです。私でなく、ファンが
決めるのですから、好き好きで、成り立っているものには、理由があるのです。
ヴォイストレーニングは、自分の声の使い方と思われますが、私はオリジナリティ
(自分のデッサン、線=フレージング、色=音色)を見つける手段だと思っています。


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<「トレーナーの選択」に関するQ&A>

☆QVT.誰でも誉めたら伸びるのですか。

A.誉められると、誰でも伸びたように思うし、自信がついてよくなります。
逆に、あまり誉められなければ、自分はだめだ、というふうになりがちです。
しかし、もちろん、どちらも違うわけです。声に検定があるわけではないので、
難しいものです。
 これは声だけでなく、指導者の考え方と受ける人の性格などにもよるでしょう。
私は伸びる人には、とことん厳しい判断をしますが、それを伝えるかどうかは
時期をみます。

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