第12号 2008.10.18

○声の高さから考えない

 最初は、あまり声の高さということを考えない方がよいでしょう。何かを相手に
強く訴えたいと思ったら、声は高くも強くもなります。本当に説得しようとしたら、
低くなるわけです。それは結果として決まってくるのです。
そういうことを方法論だけから考えるのは無理があります。

 トレーナーに習うと、多くの場合、その方法論からのメニュを一方的に
与えられてしまうのです。自分が本当によいと思っていなくても、
それをやることになってしまうのです。そうして、おかしくなった人をたくさん
みてきました。テノールの発声でロックを歌う人は、いないでしょう。
テノールの発声の勉強をする必要があるかどうかも、考えるべきことですが、
やってみる分にはよいでしょう。

○高音発声法での誤解

 高い音が苦労しないで出る人には、ちょっとしたコツで浅く口先だけで響かせて
歌っている人が多いようです。そのため、出ている響きが拡散して、まとまりに
欠けてしまいます。あるいは、やわらかく抜いて高い音に届かせています。
どちらも、体の支え、胸での声(実際には、胸部の共鳴はしていなくてもよい
のですが)のないのが特徴です。多くのトレーナーの教えているのが、この浅い高音
です☆。

 すぐに高い声にあてられるようになりますから、カラオケのようにエコーの中で
高音に届けばよい人には、効果的です。パワーを出すには、響きをより集約させる
ことと、深い声を探求してみてください。

 もちろん、何でもやってみるのは悪いことではありません。やりやすい方法で
やってみるのもよいでしょう。きっかけを得たり、あとで効いてくるかもしれません。
応用してみて柔軟性が高まったり、気づいたりすることもあるからです。
また、人によって、よしあしは違います。
 高音を学びに高音ヴォーカリストの元に、多くの人がいっていますが、結局、
生来もっている声がそこになければ、さしたる効果をあげていないのです。

 最近のトレーナーの本には、高い声を出すことについてのしくみやその鍛え方が
丁寧に書いてありますが、これにも多くの勘違いがあります。メニューをみても、
その高い声を出してトレーニングすることができるなら、最初から出せているので
あり、それは少なくても高い声を出せるようになるトレーニングと違います。
また、すべての人の声区やチェンジのポイントを一つの音高にしている乱暴な
教え方もあります。人それぞれによって全く違うし、曲や歌い方によって
異なるケースも少なくないのです☆。

○声をそろえる

 苦手な母音は、どうしても響かない声になってしまうものです。こういう場合、
弱点をなくすより、できているところをより厳しくチェックして、完成させていく
方がよいでしょう。他の条件が宿るまで放っておくのも、一つの方法です。
もっとも出やすい音(発音、音高)で、トレーニングしてみてください。

 ほとんどの場合は、根本的な問題として、体からの深い息づくり、深い声づくり
ができていないからです。これには、ブレスのヴォイストレーニングから徹底して
やりましょう。共鳴を頭部、胸部と分けるのでなく、そこに一本の線があって、
喉にかけずに自由にバランスを変化できるようにイメージしてみてください。

○響き、共鳴をつけるということ

 歌うときに、胸の真ん中と軟口蓋を意識して響かせるのか、それとも眉間に
響かせて意識して歌うのか。この問題は、歌唱発声について、簡潔にしか
答えなかった私の真意を説明するため、意図的に詳しく解説してみます。

 教科書的に答えるなら、低い声は胸声、高い声は頭声で眉間や頬骨などを
意識してくださいということです。でも現実面、相手の状態をみないで与える
アドバイスは一般論にすぎず、すべて有効なのは各論(個人別のそれぞれの問題に
対するそれぞれの対処法)でしかありません。やり方に対して、やり方を考えて、
複雑にしていくのはおかしいと思ってください。

 まず第一段階として、体(発声原理)に基づいた回答でよいのか、どうかです。
ポップスのヴォーカルや役者にとってのめざす声のイメージは、このような質問の
ベースとなっているクラシックと異なるものであることが多いのです。
クラシックでも、全く異なる見地の人もいます。
 つまり、その人の目標として、何をめざす声なのかから、切り離せないのです。
ところが、本によるメニュやそれを使った独学のヴォイストレーニングのレッスン
によって、多くの勘違いが生じています。

 軟口蓋、眉間に響かすなどということばは、たぶん、声楽家やトレーナー、
もしくはその類の本から得た受け売りでしょう。それに従って学ぶこと自体が、
目標においては、正しくないこともあります。つまり、こういうステレオタイプから、
世界的な一流ポップス歌手も生まれ得ないということです。

 次に、主としてトレーナーの述べるこういうことばがどのくらい妥当性があるか
ということです。まずは、どこかに響くという感覚を、どう認知したかということ
です。同じ発声でも、個人によって認知の仕方は違います。同じ状態を頭のてっぺん
と思う人も眉間と思う人もいます。それをトレーナーの指摘することばで覚えるから
です。

 そのように、多くは同じことばが使われながら、やられていることが全く違う
ケースは、少なくありません(認知の問題)。まれに、ことばが実体を伴わず、
明らかに誤用されても、マンツーマンで指導が理想的になされている例もあります
(二者間伝達におけることばの実体の意味のなさの問題)。


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<「トレーナーの選択」に関するQ&A>

Q10.教え方は時代とともに変わるものではないでしょうか。

A.ヴォイストレーニングの講座というのは、私もかなりスクールやプロダクション
を手伝って立ち上げました。そして、ヴォイストレーニングやヴォーカルスクールが
たくさんできました。ただ、そういうところでは大体1、2ヶ月で辞める人が
大半です。

 ここは、その頃は敷居が高く、その代わりほぼ全日制、毎日来て5、6時間
レッスンが受けられました。多分、今その体制をとっても、来る人はかなり少ない
でしょう。世の中が変って、今一生懸命なのはお笑いの方や声優、役者さんです。
ここにくる人も、徐々に移ってきています。

 その辺もヴォイストレーニングということとの難しさです。これからやっていく
ヴォーカリストと最もいい関係をどうつけるかというのも、5年ごとくらいに大きく
変ってきているところです。ここの体制も変えて、個人レッスンだけにしました。

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