第14号 2008.11.08

○高い声の発声について

 原因の多くは、ヴォーカリストが高い音をしっかりと捉えて、
歌えていないからです。表現から考えて、もっとも伝わる域で歌うように
キィを下げるのがよいと思います。音域や声量での問題というのは、
体という楽器をしっかりとつくっておくと、なんとかなるものです。
そうなると、感情を表現できる声の出し方でことばと響きのバランスをとりつつ、
音楽的にも成り立つところは、おのずと限られてくるからです。

 きちんとやっていない人が、高音を出すと、それまでに片づけなくては
いけ中った問題が同時に複雑に生じます。喉を締め、首を締め、
力で無理にあてます。音域が広がっては、また狭くなるという、繰り返し。
そこから脱したときには、本人は習得したつもりでも、くせのついた発声に
なるか、あとに喉を痛めてしまう結果となります。ヴォーカルとして体が
充分に使いこなせるだけの楽器になっていないと、どうしようもないのです。

  根本的に解決するには、自分が楽に出せる一番高い音から、
二、三音(あるいは半オクターブ)下げたところを何度もトレーニングする
ことで少しずつ器を広げていきます。できないところをできるようにするには、
できないところでなく、できるところでトレーニングすることです。
トレーニングは、できないところでは、成立しないのです。

 たまに、高音からトレーニングさせる人もいます。その方が楽で、
声が丁寧に扱えるタイプも十人に一人くらいいるのです。
高音であごが上がる人が多いのですが、あごをひいて、お腹に意識をおくことです。
音が高くなるほど、意識は体の下の方へもっていってください。

  高音の発声のメカニズムは、これらも「声帯の周波数・・・」といった原理の
解明がなされていますが、知識だけでは、現実には無力です。歌は応用、
応用されたものがよくなるように基礎を学ぶことです。
  少なくとも、私はテノールの発声をまねして、それで歌いなさいとはいえません。
テノールにも、発声しか聞こえない人がいます。声を聞かせることを歌という人も
います。私の立場では、聞きたいのは演奏だからです。つまり、発声を歌に
持ち込むのでなく、歌となるように発声を伴わせると考えてみてください。
方法論を単独で考えるのでなく、それがそのまま歌唱・フレーズと思うと、
チェックもしやすく、間違いも犯しにくいはずです。

○ハイトーンの声への挑戦

  歌の勉強やヴォイストレーニングをしたいという人の大半が、高い声を出す
ことを目指しているようです。演歌、ニューミュージック、欧米のロックなどの
曲のつくりも、相当高い声まで使っているために、高い声が出せることが
歌をうまく歌うための絶対条件、プロの条件だと考えている人が
少なくありません。何よりも届くかどうかのチェックが簡単だから、
挑戦しやすいのでしょう。トレーナーの商売欲がそれに拍車をかけている
ように思います。

  単に高い声を出すだけでしたら、さほどむずかしいことはありません。
高い声で丁寧に練習していくと、出るところまで出ていきます。
しかし、それは歌を歌うときに大してメリットにもなっていないことが多いのです。
実際は1オクターブも聞くにたえない声の人ばかりだからです。
それどころか、喉を痛める原因をつくってしまいかねません。歌を本当に
聞かせたいならば、うまく出せていない高い音にとらわれすぎないことです。

  個性を主張するのには、自分が最も歌いやすい域で歌うべきでしょう。
歌に自分を合わせるのではなく、自分に歌を合わせるのです。
何年、何十年やっても、声の変わらない人には、高音を絶対視している人が
少なからずいます。

  日本人のプロには、中高生あたりのときから、高い声が出た(もって
生まれた声が高めであった、勘がよかった)いう人も少なくありません。
トレーニングせずにできた人を、トレーニングの方法では越えられないし、
努力して同じか、いつも苦労して出すというのではかなわないでしょう。
日本人は高い声について、歌唱力もなく、高く出るだけでも、
認めてしまう傾向があります。

  海外でもハイトーンヴォーカルは天性の人がメインです。
努力で叶うものも叶わないものもあるのが人生です。日本では、
そういう欲求に対して、誰でも何オクターブも出せるようになるとか、
高い声の出し方を売り物にしている人もいます。さまざまな方法も
使われていますが、相手の資質、キャリアなどのわからない状況に、誤解、
誤用が喉に危険になる高音発声については、応用としか述べられません。


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<「トレーナーの選択」に関するQ&A>


Q12.トレーナーの指導にも限界があるのではないですか。

A.残念なことに、トレーナーというのは大体お山の大将で、どこでも一人の
生徒を独占してみているので、なかなか反省する機会がありません。
自分のやり方に疑いを持ってしまうとやれなくなってしまうから当然ですが、
よいことではありません。

 うまくいかない人は黙って辞めていきます。すべての人と合うのは無理でしょう。
養成所というのは、一人でも抜きん出て育てばいいというスタンスです。
トレーナーにもそういうスタンスの人もいます。
 マラソンやゴルフのコーチのように、一人だけできる人を選んで、一人を
徹底して育てれば理想ですが、そこまでの見る目というのは、声と歌に関しては
難しいです。それがわかるくらい力があれば、すぐにデビューできてしまいます。

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