第19号 2008.12.13

○吸う練習は不要

 声は、息を吐くときに、出すものです。声のコントロールは、吐く息の調節、
維持によって行われます。そこでトレーニングは、自分の吐く息を思い通りに
コントロールするために行ないます。吐く息の量や長さを自由にコントロール
できるようになれば、息を吸うことも自然とできるようになってきます。

 吸うことを意識し、吐くのと同じか、それ以上に時間をかけてがんばって
息を吸っている人がいます。しかし、実際は、“吸う”というより“入る”といった
感じがよいのです。将来的には、息を吐いたあと、体全体がバネのように息を
取り入れられる体をめざしてください。そこに「吸う」などという動作があっては
いけないのです。(スゥーっと吸う音が、あまりに聞こえる人は、よくありません。)

○息を長く伸ばす必要は少ない

 重要なのは、息を吸う量や吐く量ではありません。腹式呼吸と発声に
加えて、声たて(いかに効率よく息を声として使うか)の問題です。
 息や声を出して、どれくらい長く伸ばせるかといったチェックは、息の支えが
崩れるので、トレーニングというよりは、自覚と確認のためにするのです。

 ほとんどの人は、息を充分に吐けるだけの体になっていません。日本では、
プロの活動をしている人でも、呼吸力の不足で歌がうまくまわらない人が
少なくないのです。呼気を声に変える効率が悪く、息のロスが多いとさらに
そうなります。根本的には、声と息が深くなり、結びつくのを待つしかありません。
息をあまり吸いすぎないことです。

 これに対応できる呼吸を身につけるのです。イメージとしては、喉でなく、
呼吸でお腹から切りましょう。呼吸は常に吸うのでなく、吐いた分、
入るようにと考えてください。そこで、いつでも瞬時にスッーと入り、
すぐに使える体勢を整えられるために、トレーニングが必要なのです。
ちなみに、肺活量は、成人を過ぎると、少なくなっていきます。
肺活量を増やすトレーニングなどはありません。

○腹筋運動の功罪

 腹筋運動での筋肉の強化は、多くのスポーツの選手に必要ですが、
声にとっては実際に腹式呼吸に使われる呼吸機能(内側の横隔膜に
関わる筋肉や助間筋など)を鍛える方がよりストレートです。
声は息によってコントロールされ、息は体でコントロールします。それに
関わる筋肉は、一連の呼吸運動(息を吐くこと)によって鍛えることです。

 もちろん、適度にお腹の筋肉を鍛えておくことも大切なことです。
他人より、弱い人には、必修かもしれません。体力同様、平均レベル
以上には、得ておくことです。あなたがアスリートなら、それで充分です。
何事もその人の現在もつ条件で違うのです。前直筋は、鍛えることに
よって、あまり固めてしまうなという人もいます。

○力で歌うという誤解をとる

 まずは、楽器としての体の構造と発声、呼吸のメカニズムを大まかに
捉えておきましょう。

[4つのポイント]

1.呼吸【呼気】―エネルギー源肺・横隔膜
 声帯そのものは動かせないので、呼気をコントロールすることによって、
周辺の筋肉も含めた声のコントロールを習得していくのです。
そこで、確実に声をコントロールするのに、腹式呼吸の訓練が必要と
なります。息は肺を取り囲む筋肉の働きによって横隔膜を経て
コントロールされています。

2.発声【声化】―声立て(声帯振動)息を声にする咽頭喉頭・声帯
 声帯は、気管の中央まで張り出しており、左右の声帯がくっついて、
呼気がせき止められます。一秒に何百回~何千回もの開閉で、
声の元を生じます。その響きのない鈍い音を、喉頭原音といいます。

3.共鳴【音声化】―声の原音を響く声にする口腔・鼻腔・咽頭母音を
響かす。
 声を大きくしたり、音色をつくりだすのは、楽器の管(空洞)にあたります。
(ここが、共鳴腔と呼ばれます。)体の共鳴腔は、口腔、咽頭、鼻腔などです。
そこで、声が響きます。

4.構音【言語化】―声を言葉にする口腔・唇・舌子音をつくる
 声を出しているときに、口の中や唇のかたちが変わると、響きも変わります。
舌を前から後へひっこめるだけでも、ずいぶんと音色が変わるものです。
(調音ともいいます。)

 声帯での声の発生は、弦で音を生じさせているのとは、違います。
声は、声帯の振動から空気のうねりで生じます。これは口笛のように、
口唇そのものの音でなく、空気音です。いわば二枚の扉の狭い隙間で
生じる風のヒューという音で、扉のガタガタ音ではありません。


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<「トレーナーの選択」に関するQ&A>

Q17.トレーナーのレッスンは誰にでも効果がありますか。プロになれるのですか。

A.トレーナーがどの時点でその人のどこを直すのかというのは、当人の目的意識に
どこまで沿うかにもよります。プロになりたいという人が、考え方や性格が
そぐわないなら、声のことより考え方から直さないと、声だけをやっても
どうしようもありません。そこまでトレーナーが責任をもって変えられるかと
いうと、限界もあるわけです。

 よい作品を勧め、勉強方法を教えて、本人の歩みのペースから変えていく
しかありません。極端にやると、それが破れたらどうなるのかということです。
 期待しても、その期待通りの資質を本人がもっているようでも、やるだけ
やらないとものになりません。明らかにギャップがある場合、10代だったらともかく、
そのことさえ気付かない年齢になっては、世界で一流の先生が引きうけても
駄目でしょう。そういうときは、断ることが筋なのです。
 歌の場合は、それだけが目的ではありません。趣味としてもあるし、何らか接点が
付けていける人生もあります。つまり、それもまた、本人に委ねられるものなのです。

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