第21号 2008.12.27

○歌は発声で歌うものではない

 あまり声にすることばかりを考える必要はないのです。息をマイクが拾って
いたらそれでよいからです。声にすることばかりを考えてはなりません。
声が少しでも息になったら、発音や響きが悪いと、トレーニングではそういう
見方もしますが、実際はそういうことではないのです。なめらかな発声を歪ませる
ところに味も出ます。

○自然な声を身につける

 自分のなかでの判断よりも、他人にどう聞こえるかで判断すべきなのです。
ただし、しっかりした訓練ができていないと、せりふや歌うなかで、
この自然な声を保つのは容易ではありません。
 クセがあることがよくない理由は、再現性、応用性、柔軟性に乏しいこと、
その人の理想とされるオリジナルの声ではないことです。人に伝わる自然な
声というなら、伝えたいときの思いを伴い、それを妨げない声(ベターな声)と
いえます。

 アの母音から、口の中のかたちを変えないつもりで、順に「ア→エ→イ→オ→ウ」と、
つなげて声を出します。出しやすい高さの音でやりましょう。
 顎を手で(親指で強く)押さえ、どの音でも顎が動かないようにすることです。
音が移るときに、スムーズに口も響きも変えないように行ないます。
「アーァエーェイーィオーォウー」の感じでやりましょう。フレージングで述べて
あることを参考にしてください。弱点があると、声はよい方でなく、
悪い方にそろいやすいので、注意してください。

○ハスキーな声にはしない

 つぶした声の方が感情が伝わりやすいし、声もコントロールしやすいという
人もいますが、決して勧められません。つぶした声は、声質が悪く、
声量・声域も狭くなり、不自然で細かなコントロールができにくいものです。
しかも、長く休めると、もとの細い声に戻ります。つまり、何ら身について
いないのです。

 プロには、ハスキーな声の歌手、役者もたくさんいます。私は、声がよくても
悪くても鍛えられていて再現性がきけばよいと判断しています。
しかし、ヴォイストレーニングでは、そういう鍛え方をするのは稀です。
基本を習得し、あとでどこまで応用できるかで試すことです。
その応用で許されるレベルに入っていたら、そういう声もありといえます。
 声は声そのもので勝負するわけではないのですが、持って生まれたものを
充分に生かすことです。自分のやりたいこと、好きなこと、できることは
(高いレベルでは)違うということを、知ってください。

○喉を強くするには

 喉がすぐに痛むのは、よい発声ができていないということになります。
再現性が上達の前提です。声帯(喉)ではなく、お腹(横隔膜のあるところ)
から声を出す感覚で発声することです。
 ひずんだ声でこそ、伝わるものもあります。でも、その痛さゆえ伝わる気が
するというのでは甘えにすぎません。痛みや異常は、発声への警告なのです。

 声の使い方がよいとは、楽器(体)の機能の生かし方から問われるべきでしょう。
喉という楽器もその原理にそって、使わなくては声もよくなっていかないと考える
べきでしょう。喉を無理に鳴らそうとしている人をよくみかけます。
しかし、声量は息と、共鳴のさせ方で変わってくるもので、喉をいかに強く
鳴らすことができるかではないのです。

 喉を鍛えるという人もいます。私のみたところ、そういうハードなやり方を
取れる人もいますが、無理な人もいるということです。ケースバイケースです。
喉が弱くても、自分の喉と声としての使い方をしっかりと知っていれば、大丈夫です。
他人と自分とは違うのですから、自分に合った方法をとることです。ただ、
トレーニングで結果的に喉は鍛えられていくのは、確かだと私は思っています。

1.喉が強くなる、2.喉の使い方がよくなる、3.喉の限界と危険の避け方
がわかる。この3つがプロの喉をつくるのではないでしょうか。

○細くて弱々しい声を強くする

 弱点のようにみえて、強みに変わることもあります。
 もともと声の小さい人は、無理に大きくするよりも大切なことがあります。
細くてもよく通り、張りのある声であれば、充分に通用します。もちろん、
あまり声を出してこなかった人は、目一杯チャレンジしてみてください。

(しかし、いくら太い声で声量があっても、無理して出しているうちは
本当には使えません。大きな声の人は、ますます大きくしようと、
雑なままやり続けがちです。使いようによっては、表現を損ねます。)
やるだけやってみて、大きく変わることも、あまり変わらないこともあるのです。
やってから考えてもよいでしょう。それも自分の声の個性を知ることになります。


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☆Q19.私の周りには、海外で1回学んだら見違えるほどよくなったという人も
います。それは本当なのでしょうか。間違いなのでしょうか。(中略)
私も海外に行くほうがよいでしょうか。

A.海外であろうとなかろうと、1回でというのは、その人にそれだけ準備があって、
ある刺激で一つの方向や焦点にひっぱることでよくなったのであり、その刺激を
うまく受け取れたのが、その時期に過ぎないというくらいです。
 私の知る限り、海外のトレーナーは、とても有能です。
ただ、向こうのヴォーカルのレベルはとても高いため、そこでのアドバイスは、
初心者でなくすでに歌えている声においてなされることがほとんどです。

 ですから、日本人でも器用に恵まれた声のあるヴォーカルやトレーナーなどは、
比較的安易にそのまま認められますが、(というより、ほとんど友好的観点からです。
向こうの大物アーティストが日本でのみCMに出すように、大して影響を考えても
いないともいえます。何よりも、その二者間に成立したことは、
のど(声帯ほか)やその使い方に恵まれていない人が、学べるものには
なっていないということが、本当の問題なのです。

 声については、すぐれた人がすぐれた人(のどについては)に教えられるように、
そうでない人に教えられないのが、もっとも大きな問題なのに、そのことがあまりにも
無視されているのが現状です。日本のトレーナーは、そこを自覚すべきでしょう。
 なぜプロの人は、そういうトレーナーのもとにいかないのかよく聞かれます。
それはそのトレーナーはトレーナーでなく、中途半端な歌手であり、
自分よりも下手な人を自分並みにも育てられないからなのです。
トレーナーに、あなたのレベル以上に何人を育てたかを聞いてみて、
実績を答えられる人は、どのくらいいるでしょうか。

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