第25号 2009.01.31

○感情表現ということ

 歌の音楽的構成での見せ方の問題です。ここでは無駄な感情移入や雑な表現は
整理しなくてはなりません。ドラマの起承転結のように、多くの歌は、4つに
分けていくとわかりやすいでしょう。(4ブロック、4フレーズ×4)のピークに
対しても、歌い手の感情を入れるのではなく、聴く方の感情に訴えるように展開し
構成するのです。心をもっていきながらも、音楽の規則性(リピート、コード進行、
グルーヴ)を最大限、利用します。最終的に、一曲を一本につなぎます。
 といっても、1コーラス、あるいはAメロ、Bメロ、サビと、ブロックごとを一本に
通すことができたら、かなりのレベルです。
 テーマを表現し切るクライマックスは、その作品を決定していくピークに
あたります。このピークに対し、どのようにフレーズを組み立てていくのかを
考えることが、歌の構成、展開上ではとても大切です。

 感情表現を歌が必要とするとは限りません。私は、歌を音楽的に捉えるなら、
バイオリニストやピアニスト以上の感情は、投入すべきでないと思います。
声はただでさえ、感情的なものだからです。しかし、逆に発声技術や音楽性に
乏しいヴォーカリストでも感情の伝わる声や感情移入でもたせることができるのは
確かです。私としては、感情というより、魂(ソウル)や心(ハート)、
せめて気持ちと呼びたいのですが、感情ということばは誤解しかねません。

○シャウトして歌う

 本来[日常生活でできていないものは、日常生活で得ていく]のがよいと
いうのを知った上で、[効率的に早く得る、より多くを得るためにトレーニングが
ある]のです。
 外国人ヴォーカリストがシャウトするときに使っている声は、とても深く、
喉に負担のない発声をしています。子音中心ということも、高音には有利です。
それに対して、私たちの叫ぶ声は、すぐに喉にかかってしまいます。体や息が
充分に使えないまま、無理に浅い声で出そうとしているためです。
日本では役者のトレーニングで役者の声の条件を得ていく方が早いように思います。
 日本人のヴォーカルのシャウトは、上にあてて抜いたものか、生のまま、大声で
がなったものが多く、前者はインパクト、音色・個性に欠けたクセ声か弱い響きの
声、後者は生声、喉声で喉をつぶして、再現できなくなりがちです。
まだミュージカルにみられる、クラシックの唱法をポピュラーにもっていった
シャウトの方が、ましです。ただし、これは母音共鳴のシャウトなので、リスクも
負担も大きいです。
 私はあこがれから入ったまま、形だけをこなし、実のところにベースを置いて
いないことが、今の日本の歌の説得力のなさに見えてなりません。自分の声での
デッサンをしていくことです。

○一本調子を解決する

 その曲を[音楽たらしめているものがわかるまで、解釈]しましょう。メロディ、
ことばがひとつに溶けて、リズムの動きで流れてくるまで聞き込むのです。
そことあなたの感覚をさらに融合するのです。
次にどこで盛り上げて、どこで語りかけるかなどといった[展開、構成を、徹底的に
考えておく]ことです。強弱やテンポなども、あらかじめ決めて歌っては
[自分に合うように修正]していきましょう。
 これも、自分の声の音色、そして歌の音楽としての奏法を自ら見つけていく
必要があります。自分の音と奏法を見つけるのが、アーティストなのです。
 ヴォイストレーニングで、[今まで意識していなかった普段の声もよくなる]
ことがすばらしいことだと思います。トレーニングとその成果には、
[タイムギャップがある]ので、効を急がないことです。

○メリハリをつけるには

 呼吸と声での表現が一つになるまでしっかりとつかみましょう。その表現力を
決して損ねず、パワーアップして歌に持ち込みましょう。
自然にメロディを処理していくこと、日本のミュージカルのように音程を歌うのは
さけたいものです。

 次の各要素に注意して、曲を聞いたり歌ったりしましょう。
 1.テンポ、リズム、グルーヴ
 2.発声、ことば
 3.表情、表現、動作(フリ)
 4.フレーズ(スピードの変化、音の強弱変化、メリハリ)
 5.音色、ニュアンス
 6.フレーズ間の動き、イメージ


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Q.ジャンル別に歌い方、声の出し方はあるのですか。

 私は1アーティスト1ジャンルと考えています。確かに、邦楽でも分野があり、
洋楽でもジャンルごとに大きく違っているようにみえます。しかし、私はそこから
考える必要はまったくないと思います。あなたの中に蓄積しているように出てくる
のですから、誰よりも好きなものを、好きになって歌っていれば、よいのです。
(トレーニングというのとは別です。)

☆Q.ヴォーカルやヴォイストレーナーに、絶対音感は必要ですか。
それがある人とない人は、どう違うのですか。絶対音感は身につくものなのですか。

A.結論からいうと、不要です。私は幼いときに、ピアノを習っていたせいで、
絶対音感があります。すると、弾いている音の高さが音名(固定のドレミ)で
聞こえてくるので、原調(そのままの高さ)の楽譜が書けます。人の歌っている
歌に、さっと音を付けることができます。自分が歌うときに、導く音(ピアノなどの
コード)がなくても歌い出せます。しかし、これらのことは少し便利なことで
あっても、大して必要なことではありません。仕事場には必ず楽器があるのですから。

 便利なのは、カラオケスタジオや体育館やセミナー会場でアカペラでのチェックを
するときくらいでしょう。これも、小さなキーボード一つあれば解決します。)
 一方、デメリットもあります。そもそも音の高さとは、その基音となる「ラ」
(440Hz)が435-444Hzあたりで、演奏者が決めているくらいあいまいなのであり、
一つの音での絶対的な高さというのはないということ。相対音感があれば、
充分なのです。絶対音感があると、却って合わないと微妙に不快感が出ることも
あります。また電子ピアノなどで、トランスポーションという機能で固定の
ドレミを弾いて、移調した音(4度ならファソラ)を出すときに、困難を生じます。
ただ、慣れると絶対音感があっても気にならないでスケールとして弾ける人もいます。

 絶対音感をつける教材の販売や絶対音感教育を指導しているところもあります。
最上葉月さんの書物絶対音感」が大ヒットしたように、日本人はこういう基準
(形)にすこぶる頼りたがる人が多いです。北野武さんなど知識がある人でさえ、
絶対音感がないから、すぐれたミュージシャンになれない」というような誤解に
基づく発言をする文化人、芸術家が日本人に多く、絶対音感神話みたいなものを
つくりあげています。
 現実に、世界中で絶対音感のない一流のミュージシャンや作曲家、歌手は少なく
ありません。
 ということで、それは小さい頃に、音楽教育でしぜんとつく一つの能力にすぎず、
それをつける努力の必要もないし、また絶対音感をもっているからといって、
何ら誇るべき価値はありません。バイオリニストで論客でもある玉木宏樹氏などと
同じく、私は先の著書の論にも、否定的な立場です。

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