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第27号 2009.02.14

○歌やCDからの学び方

 ヴォーカリストは体ひとつですべてを表現する声の演奏者です。
トレーニングから目的を定めるなら、ヴォーカリストとしての体(声、感覚、歌)
ができていくことが、第一歩、さらに歌は芸ですので、客を魅了する力がいります。
しかし、その答えはあなたの中にあって、その器の大きさを決めるのも
あなた自身です。
 ヴォーカリストが表現するということは、声を殺して歌を生かすこと、
さらに歌を殺して心を伝えることなのです。発声法でなく声の力、歌唱技術でなく
歌の力、ステージの演出でなく、あなたの心と音楽が、人に伝わる力となるように
してください。

 大切なのは、音楽的な基本、ここでは楽理よりは、歌の中の音楽として成立する
共通の要素を入れることと、あなたの声を体の原理に基づいたオリジナルなものに
戻し、使えるようにしていくことです。そのためには、一流の音楽・歌を徹底して
聴くことです。
 同じ歌を異なるヴォーカリストで聞くこと、外国人の歌と、その日本語訳詞の
日本人の歌を聞くこと、それらを比べることは、とてもよい勉強になります。
(スタンダード、オールディズ、ジャズ、ゴスペル、カンツォーネ、ラテン、
シャンソンなど。)

 まずは、一流のヴォーカリストの学び方を作品のプロセスから追体験し、
しかも彼らの基準においてチェックしていくことができるようになることです。
彼らが何から学んだかを追うと、やがて全ての分野をカバーしていくことになります。
 フレージングのコピーは、トレーニングメニュとしても使えます。
できるだけ広い分野から、一流といわれたヴォーカリストの作品を集めましょう。
彼らの伝記、自叙伝などを読むのも刺激になります。

 実際に歌からどう学ぶのかとは、それこそ、才能というものです。
同じ曲から一つも学べない人も、百以上学べる人もいます。
アンテナが一つしかない人と、100以上ある人がいます。
私は、レッスンはこういうことの重要性を伝え、そのアプローチを試みさせるのが
全てだと思っています。つまり、アンテナ一本の人に、10本、20本のアンテナの
立て方を伝えるということです。

 歌の世界では、自分の声を使って進行・展開や構成を音の線で
表わしていきます。これを私は、絵画に例えて、これをデッサンといっています。
いわば線を引く=フレージングのことです。そこに色=音色を加えます。
カンツォーネ、オールディズ、ラテンなどは、声で音のデッサンを
 どうしているかがわかりやすいため、発声・リズムグループも含めた、
 基本の教材として使っています。
・唱歌、童謡は、呼吸と発声フレージング、日本語の勉強によいです。
・演歌、歌謡曲は、日本人のデッサン情感表現のデッサンの研究によいでしょう。

 声をそのまま大きく使って歌に展開していく段階では、あまりテクニックや
効果のための装飾を入れず、ストレートに歌っているものの方が、材料にしやすい
のです。私は音響効果が悪いため、生の声のわかりやすい1950~1970年あたりの
作品をお勧めしています。

○独習の注意点

 独習は難しいというのは、より厳しい判断基準をもって行なうということです。
判断基準そのもののレベルアップこそが、決め手です。独習には、
あなたにプロの耳が必要です。判断ができなくなれば、師につくことです。
 トレーニングというのは、基本的には自分でやるものです。それをチェック
したり、新しいアプローチやヒントを授かったりするために習いにいくのです。

 そこで、より深いこと、本物のこと、ある種の真理のようなものに触れ、
自分の毎日行っていることの意義や効果を再確認し、そして、さらに修練を
積んでいくわけです。私は、そのようなことを自分で盗める(自主的に学べる)
場でなくては、あえて学びにいく必要もないと思います。つまり、絶対に一人で
やったり他のところでできないことのためだけに、レッスンを使うべきだと
思っています。

 そこにいることで、何かトレーニングをやっているつもりになるような、
安心感しか与えないところでは、楽しい、落ち着く、親しみがわく。
そして、当の目的とそれているのにさえ、気づかなくなっていきます。
何事も、学んだから必ずしもよくなるのではないということを忘れないでください。
長く学ぶと、何事も学んでいない人よりもすぐれますが、世の中でどのように
通用しているかと常に問わないと、必ずおごりや慢心が入ってきます。

 それも含めて、本人の力次第なのです。自分でできることはすべて自分でやり、
自分でできないことだけのために、トレーナーの才能をあなたが最大限に
引き出して、使うことです。
 参考書も一長一短があります。ことばや内容をうのみにしないことです。
世の中には、そういう考え方や、そのように考えている人がいるという程度に
考えてもよいでしょう。本を読み、スクールを転々としてはいつも悩んでいる人が
います。どこにも答えはありません。

 すでにあるものを習得するのでなく、あなたが創りあげるのです。正しい方法、
間違った方法とか、よい先生、悪い先生とかではなく、世の中すべてから、
あなたが生かせるものをよい方に生かしてものにしていくことです。
私がみてきた限りでは、世の中にはその逆のことをやっている人ばかりなので、
そうすれば必ず、やっていけるようになるのです。
 何もないより、少しでも本や教材が出ていることは、刺激にも勉強にもなります。
拙書も参考にしていただければ幸いです。

○飲食物のよしあし

 食べものに関しては諸説ありますが、大して気にすることはないでしょう。
辛すぎるものや刺激の強いものなどはよくないという人もいます。
私自身は、声を出す直前でなければ、あまり関係ないと思っています。
声帯に直接、飲食物はふれないのに、おかしなことをいう人が専門家にも
多いようです。
 ―個人の体験は参考になりますが、すべての人に当てはまらないことが
多いという顕著な例の一つです。


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<今週のQ&A>

☆Q25.トレーナーに声楽家出身の人が多いようですが、
J-POPSのヴォイトレができるのですか。(1)

A.これも私が20年以上、ポピュラーから外国人、ゴスペル歌手、黒人トレーナー、
多くの人とやってきた結果、最終的に選んできた状況です。
今後はわかりませんが、今のところ、考えられる可能な限り、理想的な状態と
思っています。カルチャー教室などでは、オペラ歌手が一般の人に発声や
ヴォイトレを教えるのは普通のことです。

 私はかなり早くから、声楽家にお手伝いをお願いしていました。それには
J-POPSが声域を広く、しかもハイトーンが中心になってきたこともありました。
またミュージカル志願者やミュージカルのプロの方などが増えて、高音の強化を
必要とされたからです。そういうことを求める人には、私の考えとしていくつか、
声楽家にお手伝いしていただく理由があります。

 まず、声の基礎づくりでは、声楽家は、呼吸や発声に何年ものプロセスを経て、
体づくり、声づくりをしている。歌唱や演技と切り離して、声をみていることも
大切なことです。役者や声優は声の演出(表情やしぐさ)に早くいくため、
3年、5年というプロセスで、呼吸や声そのものの成長をみていません。
 さらに、ここに通われる役者、声優の方は、そういう人が教えているところでは、
声の問題が解決しなかったからいらっしゃったのです。そのために初心者にも
増して、日本人を一時、離れる感覚、体づくりを必要とするからです。
 
 一方、ポピュラーの現役ヴォーカルなどのトレーナーでは、その人の
好き嫌いや感覚に、そのトレーナーがプロとしてすぐれているほど
左右されやすいし、違うタイプは育ちにくく、似たタイプは何年たっても
そのトレーナーの半分くらいの実力で終わってしまいます。
ポップスのトレーナーは、一人で教えている人が多く、もともと、のどのよい人、
声のよい人、器用に歌える人が多く、人を育てる経験をあまりつんでいません。
(次回に続く)

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