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第28号 2009.02.21

○ヴォイストレーナーの仕事と資格

 私の元にはときおり、こういうトレーニングも資格をつくったらよいのでは
という話がきます。また、当研究所の看板や推薦を地方などでもあげたいという方も
います。今のところTV出演とともに私がお断りしていることが、
この二つのことです。

 資格というのは、何かをやるための必要条件です。もちろん、多くの民間
資格は、それを管轄するビジネスのためにあるようで、権威もなく、商売にも
ならないものが多いようです。もちろん、医者などは資格がなくては恐いでしょう。
絶対に必要というものもあります。しかし、ヴォイストレーナーは、そんなことで
分けられようもありません。

 音楽療法は、今ではポピュラーな資格となりました。とても発展しています。
しかし、そもそも資格というお墨付きに頼られなければやっていけないと
いっているところで、馬脚を表わしているともいえるのですが、資格認定の
普及が大いに貢献しているのも確かでしょう。

 思えば、当研究所の顧問であった、芸大名誉教授の故桜林仁先生
(当初、日本ヴォイス研究所)には、学生時代からお世話になりました。
ヴォイストレーニングは医学と切り離せないからです。
今のヴォイストレーニングはどうでしょう。とても私にはまとめる力はありません。
つまり、まとめようもないということは、分けようもないということです。

 たとえば、今、ヴォイストレーナーを名乗る人には、大きく分けて、
医者(耳鼻咽喉科)、声楽家、役者、ここのところ、ポップスヴォーカルの
指導者に多くなってきました。そのため、ヴォイストレーナーということばは、
何となく歌手指導、ボイストレーナーは、役者や声楽家指導に主に使われています。
ヴォイストレーナーは、ヴォーカルの用語が一般化したためか、ポップスに
多いようです。

 たとえば、役者と、声楽家のボイストレーナーのやり方は、明らかに矛盾します。
やるべき内容も違うし、優先度も違うからです。さらに目的が違うからです。
役者と歌手は、やることが違うのです。それゆえ、トレーニングが違うのは、
あたりまえです。(しかし、私のブレスヴォイストレーニングは、共に使える
言語レベルで行なっています)

○ヴォイストレーナーとしての仕事

 私のトレーナーとしての仕事を平均的な一ヵ月でご紹介しましょう。
 まず、私の主宰する研究所でのグループレッスンと個人レッスン、
1.週2~4回(他のトレーナー10数名とともにやっています)
2.月に3回の講演会
3.専門学校のトレーナー研修
4.日本語教師の養成学校、声優養成学校など、他校の仕事
5.劇団のワークショップ、お笑い芸人、落語家や弟子の指導
6.音楽プロダクションのプロ養成 ミュージカル劇団のプロのレッスン、レゲエ、
  ヒップホップ、ラテン、なんでもあり
7.大学や、カルチャーセンターの特別講義
8.芸大など音大受験生のレッスン
9.CDを出しているヴォーカリストへのアドバイ
10.オーディションの指導、デモテープ作り
11.プロダクション契約

 それとは別に、
1.研究所内のトレーナーの育成(報告を読み、研究生のレッスンの状況を
  捉えます。私のところは雇った時点で、ピッチトレーナーなどは別に、
  すべて私よりも優秀なプロにしています。)
  研究所内研究生のレポート、ステージアドバイ
2.研究所内のレッスンのリライト
3.会報、HP、メールマガジンの発行(このあたりは、スタッフに任せています)
4.科学、医学などの研究、共同研究でも、もっぱら私が学びにいく方ですが、
  研究生や日本人の声の分析など。近著「声のトレーニング」を参考にして
  ください。
5.海外への声のサンプリング、学校見学や現地の関係者に会います。
6.研究論文と本の執筆、教材づくり
7.企業研修やブレーン、顧問契約
8.マスコミなどの取材を受けます。
9.DVD、CD、教材、専門書、専門論文の収集と整理(海外本の翻訳、解釈)
10.声のデータベースづくり

 私の場合は、もともと大手プロダクションにプロの養成を頼まれたところから
スタートしているので、しかも音大にお世話になりつつ、音大出ではないので、
異色かもしれません。(私は、日本ではヴォイストレーナーの草分けの先生と、
日本音響技術専門学校に日本ヴォイス研究所をつくりました。
芸大名誉教授の桜林仁氏には、私の弱点の医学的アプローチと、
当時まだ、あまり知られていなかった音楽療法を中心にご教示いただくため、
顧問を引き受けていただきました。)

 専門学校への出講、プロダクションのヴォーカル育成中心にやっていましたが、
思うところあり、専属契約を打ち切り、アマチュアの養成所としてヴォイス塾を
たち上げました。十五年やったところで、一部を除きクローズし、
ふたたびプロの育成、トレーナーのアドバイス中心に動いているところです。


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<今週のQ&A>

☆Q25.トレーナーに声楽家出身の人が多いようですが、
J-POPSのヴォイトレができるのですか。(2)

 ポップスでプロをめざす人などは、トレーナーになるのでないのですから、
少なくてもトレーナーを超える力を、そのトレーナーよりも少しでも早く身に
つけることに、教えるということの成果が問われます。
 また、自分の経験だけが中心で、理論的な人もいますが、
丸写しや間違った解釈、仮説に偏り、検証に欠けています。
ただ海外にいった構成だけで、やっている人もいます。

 あとは日本のポピュラーにおいては、歌い手は役者などよりも、
日常の声がよくないし、鍛えられていない(素人声)のことも多いのです。
それではプロもくるここでのトレーナーは務まりにくいです(5年ほど基礎訓練を
やってきた人や、現役のプロをも指導できる力が必要なのです)。

 ここは研究所なので、トレーナーもまた研究員です。多くのプロや一般の
生徒の経験を積ませ、音大での指導を超えた経験を積ませてきました。
 さらに、ここのトレーナーは、ここで実際にそういう人を教えてきた経験が
豊富にあります。ここでは、複数でプロから一般の人までみており、
わからないことや違うことは他のトレーナーで補完やフォローができます。
 分担して担当するので、年間に50人から150人ほど接することになり、
どこよりも経験を早く積むことができます。(しかも、プロも含めて熱心な人や、
かなり分野の違う専門家もいらっしゃるので、学ぶことに事欠きません。)

 マンツーマンでも、セカンドオピニオン、サードオピニオンをもてるため、
一人のトレーナーが気づかぬことや、そこで偏ってしまうことを是正することも
早くより正しくできます。加えて、会報などでそのトレーナーの過去からの
トレーニングや他のトレーナーのトレーニングも、膨大な情報として知ることが
できます。これらは一般書物よりも、あなたにとって具体的かつ実践的なヒントと
なります。
 今も教える力のあるトレーナーとともに、研究を進めています。これからは
もっと声の生理学の知識や学者などとの共同研究などにも参加していきます。

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