第31号 2009.03.14

○ヴォイストレーニングの効果

 私は、先述したように、多くの人をみてきました。
多くのトレーナーもみてきました。さらに、多くのトレーナーとトレーニング
している人をみてきました。この数と質において、日本ではトップクラスに思います。
それは最初から、この分野は私などが一人でできるほど、生やさしいことではないと
いう直観があったからです。今や、こぞってコラボレーションの時代です。

 私は、きっと唯一、日本では、同時期に複数のトレーナーを一人の生徒につけ、
その結果までを数年にわたって見届けた稀有の経験をもつものでしょう。
 しかも、一流の声楽家から、音大生レベルまでと、ポピュラー、
加えて外国人など、研究所外ですから、例には、ことかかないのです。
(L.A.など、海外に、私のところのトレーナーはトレーニングもトレーナーも
していたので、日本人が外国人を教えることも知りました。)

 また、講演会にくる人やここの研究生は、どこで何年、何というトレーナー
について、やっていたということを詳しく述べてくれます。
声専門の研究所ですから、私は日本中のほぼすべてのトレーナーを、
会わずに知るはめとなりました。
 もちろん、その人たちの口上を鵜呑みにして、そのトレーナーを非難する
ほど愚かではありません。トレーニングやトレーナーについての批判についても、
私にとっては、その人自身の考え方や目的を、さらに深く知りたいがために
すぎないのです。

 私のところも感謝してくれる人は、目の前にみえているだけで、
いつ知れずやめたり、他のトレーナーのところにいった人もいるからです。
それに対して言い訳もしません。どう考えるべきかは、私なりにHPに示して
いますが、ここでは私以外の十数名のトレーナーがそれを補ってくれています。

○効果の客観的判断、検証の難しさ

 私が科学(音響)や医学の機器での測定にも真剣になっていったのは、
声や歌に関するトレーニング効果ほど、あいまいなものはないということからです。
それは他の人に自分の理論、正しさを示したいという程度の低いことでは
ありません。

 もちろん、芸術において科学は、後追いの実証しかできないことは知って
いますから、すぐにトレーニングそのために使えるようになるとは、まだ思って
いません。そういう機材を使ったら、私の肩書きに、私の関わった有名な
音大や専門学校、教授名、海外のトレーナー名などを掲げるのと同じく、
受講する人の心理的に安心や信頼感を与えるとはいえるでしょうが、
データや客観的根拠を欲している人に喜ばれる弊害も知っているからです。

 効果、成果とは、目的に対してあるのですから、効果があがったというのは、
目的に近づけたり、目的がかなうことによって、実証されるのです。
科学的という人ほど、非科学的であるのは、どうもよくあることのようです。
 同じくビジネスを批判する人ほど、自らは自分の生活のため、少ない生徒の
月謝で何とか生きているのですから、とても保守的になります。

 どこの分野でもあることでしょうが、そんな人には、こういうことにどれだけ
手間とお金がかかるか、想像してももらえないのです。どこの援助もなく、
研究活動を進めるのは大変なことなのです。

○トレーナーめぐりのよしあし

 以前、私のところの生徒が訪ねたトレーナーが、私のやり方について
いろいろ言っていると聞きました。しかし、その人は、私自身の直接の
アドバイスは一度も受けていない人なのです。伝聞だけで、すべて判断する。
こういうことは、素人には(日本ではプロの人でも)よくあります。

 そのあと、何人かそこで学んだ生徒が私のところに在籍したので、そのトレーナー
の特徴や教え方についての方向性や判断ポイントを知ることもできました。
 私はそれについて、あれこれ言いません。私自身が、経験したことではないし、
経験したから、伝言だけでわかるとは到底、思わないからです。
ただ、私自身が学びに行くなら、どんなレッスンであれ、最大に自分に
生かせるよう努力すると思います。声はそこに行ったら、手に入れられる
ようなショッピングではありません。きっと、自分よりキャリアのある人から、
学べるだけ学びとるでしょう。何にしろ、相性や考え方もあるのです。

 さて、1.そこをやめたということ 2.やめたあとに他のところを探したということ
3.さらに私のところに来たという、この条件をクリアしたという点で、
何かしら、ここに来た人も、同じ特徴があると思うのです。
 なかには、権威筋に弱く、著名なトレーナーに順番にあたっていくタイプの
人もいます。(なぜか、本を読むせいか、私のところにもよく来ます。)
それでよしあしのすべては判断できません。そこをやめて、私のところを
選んだ時点で、ここに合った人ともいえるのですから。

 たとえば、私のところの近くの医者へ、生徒が行くと、私のところでは
何をやっているのかと医者が不審に思うのと同じです。どこよりも多くの人数を
抱えて、しかも月3回の講演会でもいろいろと医者を紹介していたのですから、
当然のことです。

 いつも私は、声を壊してからでなく、壊すまえに行くように、
医者に行くように、と言っていますこれは将来のことも含めてのことです。
さらに講演会で、のどのよくない状態という人に勧めているので、
あたりまえのことです。医者には誤解されているだろうなとは思いつつ…。
でも最近は、何人もの優れたお医者さんと共同して研究できるようになりました。
いつでもいらしてくださいね。


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<今週のQ&A>

Q28.ジャンルが特殊なのですが、トレーニングとの接点がとれるか心配です。

A.今ここに来られている方には、エスニック関係の方も多いです。
フラメンコや邦楽も名人のお弟子さんが来ています。邦楽のノウハウが
あるわけではないですが、声の基本ということでやっています。

 20年前は、演歌の人も多かったのです。当時は、ヴォイストレーナー
作曲家の人か、クラシックの人しかいませんでした。
大体、作曲家が教えていました。音楽を分かっている人があまりいないので、
作曲家が自分で曲を作って歌い手に教え、デビューさせていました。
演歌もほとんどそうでしたが、その流れはなくなってきました。
 ますます、いったいどこに対してヴォイストレーニングをするのかという目標が、
取りにくくなってきています。

 ヴォイストレーナーも多くなり、いろんなトレーナーもきます。
 声は、相手にもいろんな問題があって、一人の専門家だけでは対処できない
ものです。私も医者や声紋分析、語学音声学の学者も含めて、情報交換しています。
それでさえ、どうしても分からないことがたくさん出てきます。

 およそ多くのトレーナーは、自分がやったことをやればいい、
自分がやれたから、他の人もできるだろうと考えます。
しかし、20年もやっていれば、実際には全くそうではないということはわかります。
10年、20年見ていると、結果が出るわけです。プロになりたい人にとっては、
歌がうまくなるとか、声がよくなることは、結果ということであれば、
プロになれたかどうかに帰結するのです。

 私がここでやっていたことは、少なくても自分レベルで基本ができている人が、
千人くらい出てきたら、1ステップ上にノミネートされるというレベルでやって
いました。基本的には、試行錯誤で体制を改めつつ、いつも変えていきます。
個人レッスンでやっていますが、歌のヴォイストレーニングの割合が半分、
役者さんや声優さん、あるいは一般の人のほうが声に関して厳しく求めるように
なってきたのを感じます。

 あなたがヴォーカルであるなら、ヴォーカルというのをはっきりさせていかないと、
ヴォイストレーニングとの接点がつきにくいです。
トレーナーとも、接点をどうつけるかが問題です。
 どんなトレーナーでも、接点のつけ方さえうまく変えていけば、学べることは
いろいろとあります。例えば、最初は合わないようでも続けていることで、
効果を出している人もいます。

 相性の問題や好き嫌いの問題も、障害になっていることが少なくありません。
ここは10数名のトレーナー体制でやっていますから、よくわかります。
 先生が合わないので変えることもあるのですが、合わないといわれてしまう
先生の方が、何人も高レベルに育てている場合もあります。
結果として、5年10年先を見て判断していくのです。

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