読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

第33号 2009.03.28

○日本の音声教育の現状

Q.東京にはよい先生がたくさんいるのではないかと思います。
よい先生を確かめたいと思っているのですが、どうすればよいですか。
また、どういう生徒がよいのでしょうか?

A.私も十代のときに、全国の先生を探し回りました。
その結果、クラシックの方に行くしかなかった。今も、そう変わりないと思います。
ポップスでもやっている人の人数が増えただけのように思えます。大いに探し
まくってください。納得のいくまで、あなたに大切なことならあたりまえでしょう。
私がアドバイスできることは、一生、信じるに足りる声とは、そう簡単にめぐり
あえません。めぐりあっても、それは自分のものでないなら、意味はないし、
第一に、他人にあまり教わろうと思わない方がよい、ということです。

 第一に、多くの音を聞き分ける耳を持っていないのです。
歌での声とオリジナリティの作品への評価と、それをよくするための方向を
与えられるには、高度な経験が必要です。
 トレーナーの声を聞いてください。よくて歌だけでしょう。
大半は、話し声さえも普通の人と大して変わらないでしょう。
 日本人の音声に対しての意識がいかに低いかということがわかります。
(すぐれたトレーナーの声は、惚れ惚れするものです。欧米のトレーナーの声を
機会があれば聞かせたいと思っています。)

 だいたい20歳前後のときというのは、何もわからないのが、可能性です。
だから、一途に突っ走れるのです。ただ、今の日本人の場合は、
芸事の経験や、そういうものにとりくむ基本の考え方がありませんから、
そのままでは難しいでしょう。
まずは、目的と、そのプロセスをはっきりさせていきましょう。

 こういう世界は独学がベースです。どんな先生についても、
24時間一緒にいるのではありません。何事も、信じる分には、効果は出ます。
だから、とことん迷っても、決めたら、相手を信じ切った方がよいでしょう。
(私は、最初から一方的に信じてくる人は、どちらかというと敬遠します。
信じるということは、効果を出すための条件ですが、責任を相手に任せている
だけの依存症に陥らせることも多いからです☆。創造や表現が目的なら、
これはよくないのです。)

○人を選ぶ能力、使う能力

 何事もノウハウやマニュアルの効力というのは、個人に帰すものです。
たまたまうまくいくことがあるかもしれないが、本当に成功するとしたら、
それは使う人の能力によります。
 一流になる人は、一流の人につき、そうでない人はそうでない人を選ぶ。
やれていく人は、やれる人に、やれない人はやれない人につく。
 この本質を観る眼、選択眼もまた、才能です。
 同じ人についても、その人の能力をどこまで生かすかは、人によって
千差万別です。同じ額を払って同じ時間を費やしても、得られるものは全く
違います。すぐれた人は、相手のもっとも高い才能を引き出すとさえいえます。

 ところが多くの場合、最初に見えていたはずのものが、渦中に入ると
曇ってくるものです。そして、青い鳥を求めるように、どこかに正解があると、
それを探したがる。相手にそれを求めるのです。
 日本人は、殊にそれを他の人のもっているものへと追い求めます。
追うから自分を見ないのです。この状況のままでは、何事も実現不可能です。
師とは、何かを成し遂げる人が、自分自身を知るためにいるのですから。
 トレーナーと全く同じようにやりたがる人も多いようです。
もちろん何をやってもよいのですが、もし間違えというのがあるとしたら、
そこが唯一の間違えなのかもしれません。

○真の指導とは

 真のすぐれた指導というものは、本人さえわからないうちに、本人に努力を
強いる結果、本人の力でものごとを成し遂げさせます。そこで感謝もお礼も
求めません。やれる人は自分の力でやっていくからです。
 本人がひたすらやりつつ、工夫しつつ、成功するまで続ける。
その邪魔をトレーナーはしてはいけないのです。信じて待つ、見守るしかない
のです。技術よりも精神的なことや思想の方が、ずっと大切なのです。

 ところが、日本人というのは、類に交わり赤くなります。
写しとることを上達を思うから、教え上手に思われる人について、
早く教えられて、教わったと満足して終わるのです。
 早く求めてはうまくいきっこないから、一緒に悩んでくれる人を求め、
そこに情を感じ、親しみに感じるのです。それを本当に、自分のためになる
ことと混同してしまいます。そういう人には、トレーナーはただのカウンセラーに
なってしまうのです。となると、そうしないトレーナーは、わかってくれないと
嫌われることになるからなおさらです。

 教えたがりの先輩を選ぶか、師を選ぶかは、その人の精神度と成熟性に
かかっています。こればかりはどうしようもありません。
その人の器(と将来)ほどに、選ぶのですから。
 これまでやり方よりも、選び方が悪かった。学び方よりも生かし方が
悪かったのを省みず、またさらに最悪の選び方、生かせない道を、
その人がその人の判断ゆえにしてしまうのです。
 私が、こういうことに少しは早く気づけたのは、すべて私よりも人生経験を
積み、判断の適確な師やアーティストに早く会えたおかげです。
でも、他の人は、私ほどにそういう人を活かせなかったように思います。


---------------------------------------------------------
<今週のQ&A>

Q30.トレーナーの指導にも限界があるのではないですか。

A.残念なことに、トレーナーというのは大体お山の大将で、どこでも一人の
生徒を独占してみているので、なかなか反省する機会がありません。
自分のやり方に疑いを持ってしまうとやれなくなってしまうから当然ですが、
よいことではありません。

 うまくいかない人は黙って辞めていきます。すべての人と合うのは無理でしょう。
養成所というのは、一人でも抜きん出て育てばいいというスタンスです。
トレーナーにもそういうスタンスの人もいます。
マラソンやゴルフのコーチのように、一人だけできる人を選んで、
一人を徹底して育てれば理想ですが、そこまでの見る目というのは、
声と歌に関しては難しいです。それがわかるくらい力があれば、
すぐにデビューできてしまいます。

広告を非表示にする