第42号 2009.06.06

(3)トレーナーの経験と能力について

○教えられた経験について

 まず、本人の教えられた経験の有無です。役者やヴォーカリストでは、
才能があり、器用で、すぐ現場でプロとなれた人がいます。
こういう人は、同じタイプで、仕事に選ばれた人にアドバイスするにはよいでしょう。
しかし、一般の人や初心者を教えるにはとても苦労します。
長嶋茂雄さんがリトルリーグの監督をやるようなものです。
プロの現場で選ばれてきた人には、よき先輩としてアドバイスできるかもしれません。
つまり、プロ野球のように才能と実績がある人しか入らない世界では、
すでにそこにいる人は選ばれた人だけだからです。

 教えられた経験のある人は、最初は自分が教えられたように教えるでしょう。
特に日本人はその傾向が強く、そのため形ばかりになっていることがたくさん
あります。まれに、そこから自分のやり方を創出したり、相手に合わせた指導を
できるような人もいます。が、見てみると稀です。行き過ぎて自己流となる人も
少なくありません。

 邦楽のように、自分と自分の先生との関係をまったく同じようにステージに
もちこめるときは、まだよいでしょう。まったく違うタイプや違う目的には、
かなり限定した目的でないと、効果が出にくいのは確かです。
 声楽出身の人がポップスを教えるときにも、その傾向が強いものです。
いつまでも、先生のレベルに追いつきません。
私はどちらかというと、トレーナーには、ポップスより声楽の人を、ピアニストでも、
クラシックの方を採ることになりました。客観視する能力(特にトレーナーには、
自分の好きなポップスの歌唱法に左右されないこと)が大切だからです。

○グループで学んだ経験について

 グループで教わると、そのなかでの違いやオリジナリティに敏感になります。
もちろん、声楽などでは、本当の個性差を見い出せるのは、かなり高いレベルに
なってからですが。共通のベースをとことん学ぶのが先だからよいことです。

 そこでいろんな進歩の仕方があるとともに、生徒のレベルや違いによって、
違うやり方をとることも学べます。劇団やミュージカルなどでは、おのずと
そういう学び方ができるのが大きなメリットです。特にダブルキャストや演目が
同じなら、人を育てる人には、とてもよい勉強になります。
 ただ、自らが個人レッスンしか受けていない声楽家には、グループレッスンは
苦手な人が多いようです。
 トレーナーによっては、個人レッスンでも他人とのレッスン(たとえば前の人)を
見せる方式を採る人もいます。これもレッスンする人、レッスンを見る人の相互に
とって有意義なこともあります。

○複数のトレーナーについた経験について

 わかりやすさ、求められるレベル、やり方、優先順位、判断の違いなど、
その比較から得られるものは大きいでしょう。いろいろと学べます。
しかし、受け手に柔軟性がないと、「どちらの先生が正しいの?」
「どのやり方がよいの?」「いったい、どれが正しいの」と迷いが深まることに
なります。初心者のうちは異なる目的で使い分ける方が無難でしょう。
徹底的に選び、あるいはそのトレーナーの使い方を限定し、決めたら有無をいわず、
その範囲内において、迷わずにやることです。自分の目的、自分自身について、
そして判断力の高さが問われます。

○個人レッスンを受けた経験について

 これも、取り組み方しだいです。自分以外の人の判断を知ることはとても貴重です。


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<今週のQ&A>

☆Q39.前に声が出ません。自分でやっている発声練習の効果が感じられません。
声が浅いのでしょうか。「ア」でやっていますが、違う音がよいのですか。

A.ベターな声として、音高、発音(ことば、特に母音)のもっともよく出るものを
選び、そうでない音高や発音をそれに合わせます。
自主トレでは、よい方でなく、悪い方に合っていくことが多いので、要注意です。
アエイオウでは、オやウが浅くなりやすいです。日本語のアも浅いものです。
よい声というのもいろいろあり、深い声なら、ガ行、顔にひびく声なら、ナ、マ行、
明るい声ならラ行などを使ってみるとよいでしょう。カ行は、口の奥、軟口蓋で
つくりますが、ガ行にすると、有声音になります。さらにベターな声を体、息で支え、
ベストの声にしていくのです。簡単な調音図を載せておくので、参考にしてください。

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