第43号 2009.06.13

○若いヴォイストレーナーの一方的な思い込み

 今は、手っ取り早く20代の似たタイプのトレーナーが歌って、それをタレント
ヴォーカルがそっくりと真似して習得しています。形をつけるのに早いからです。
それゆえ、皆同じような発声、歌い方になります。
 しかし、20代のトレーナーには、人を育てたり、5年、10年と人をみた経験は
ありません。なぜ、そのトレーナーは、プロ歌手になれなかったのか?
ルックス、スタイル、カリスマ性、それとも、こんなことをやっているから
でしょうか。他人に声を教えることは、自らののどをロスしがちです。

 少なくとも自分の声が鍛えられ、自分の声を知り尽くしてからでないと、
こんな危険な仕事はお勧めできません。依然として、日本のポップスの
ヴォーカルは曲を正しく歌うことを教えてもらっているだけなのです。
それならピアノのうまい作曲家で充分です。
謡曲の時代でもトレーナーは、ピアノで音をとってあげるのが役割だったように
思えます。すでに選ばれた個性、声、歌がその人にあったからです。

 プロにも、楽譜が読めない人はいます。美空ひばりさんやサザンの桑田さんは
別格です。海外でも口うつしで歌を教えられている人もいます。
しかし、それはヴォイストレーナーとは少し違います。
欧米も同じ、ヒット曲が出てこそ、プロなのです。

○年配のトレーナーの経験からの判断ミス

 20代後半以降にトレーニングした人のやり方もまた、10代や20代前半の人に
そのままあてはまりません。
 よく、トレーナーを変えて、成果があがったという人がいます。
これもどこまでがそうなのか、本当は本人には正しくわかりません。
他人にそのように教える人は要注意でしょう。下積み期間や年齢を、
自分に効果がなかったからといって、無視してはいけません。

 知らずにベースづくりが、声が強くなるなどということが起きていて、
そこに違うやり方で開花したといえることの方が多いからです。
そもそもベースづくりとその使い方は異なるものだからです。
若い人は、トレーナーにではなく、それ以下の世代に歌うのです。年配の人の
思いもしないことができるのが彼らにとっての最高の歌かもしれません。

○肩書きにとらわれるな

 知り合ってすぐ、その人の名を使用したり、あるいは○○を育てたなどと出せる
人がいて、感心します。そこに大した名が出ていないのは、苦笑ものですが。
 実際、ヴォーカルが私のところを訪ねたときに聞くと、そのトレーナーのことを
覚えてなかったり、ということがたびたびあります。というのも、何人ものトレーナー
に短い期間つくことがあるからです。(私は短期のレッスンは、原則としてお断り
しています。本人が短期でやめるのは構いませんが)。その多くは宣伝のための
売名行為です。10年で成り立つものに、「1日で上達しました」というなら、
マジックです。そういう自信のつけ方も必要と思いますが、トレーナーは黒子役、
あまり宣伝がましいことは避けるべきでしょう。


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<今週のQ&A>

Q40.音声の世界の表現力を高めたいのですが。

A.お笑いのDVDを見ることと、音声だけで聞くこととを比べてみてください。
振り(動き)を学ぶには音声を消したり、その状態でスローや早送りするのも
いろんな気づきを得るのによいでしょう。

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