第45号 2009.06.27

○トレーナーをすることのデメリット

 多くのトレーナーの仕事は、誤解を恐れずにいうと、音楽の仕事では
ないのです。ただ、プロやそれなりにやれるレベル以上で人が集まっているなら、
教えることで自分の勉強にもなります。
 プロと接することの機会は、多くのトレーナーにはないでしょう。
駆け出しのヴォーカルがトレーナーをするなら、初心者相手に徹するしか
ありません(スクールも似ています)。
 多くの生徒は、すぐにやめますし、この分野に残らない人です。
大手のスクールのトレーナーをやるのも、テレファンアポインターなんかと
あまり変わらないところもあります。

 若い頃の喉はタフではなく、自分の喉によくありません。まして自分が
世の中に出るのには、最高の喉の状態をキープしなくてはいけません。
“ひどい声”を聞いて、それを直す、音程やリズムのはずれたのを
聞き続ける、これもかなりのハンディキャップになるはずです。
ましてや、生徒のコンサートやレコーディングまで関わっているよりも、
もっと自分のことで、すべきことがあるはずです。

 こういう人は、とても面倒見のよい人で、私の知る限り、それゆえに
アーティストではありません。一流のプレーヤーは引退後、
一流の弟子を育てますが、ヴォーカルに関してはあまり成り立ちません。
 原則としては、自分の世界を創り上げてから教える方にまわるか、
きっぱり断ち切って専念すべきです。生徒が先生くらいにはなれると勘違いします。

 ところが、食べるために自由で割りのよい職などと考え、しかも先生で、
歌っていると生徒は自分のライブの安定した客にもなります。
ですから、どこでも指導に甘い先生になります。
音楽という環境もベースもない生徒に、そういう場を与えることで、
自分が自立できなかったのと同じように、生徒の自立を妨げかねません。
生徒に大丈夫、がんばったらやれると励ましながら、客観的には、
これではやれっこないというようなレベルにしてしまいます。

 トレーナーが教えるのでなく、本人が精一杯やるようにすることを教える
ことです。時期がきたら、追い出してでも、一人立ちさせることです。
スクールでライブをやっても、客は、純粋な客ではありません。
これを知った上で、表現を徹底させようとしても、厳しいものです。
サークル活動、カルチャーセンターでの歌謡教室の役割なら、それでかまいません。
本業のある人が、歌を自分の金を出して、どう楽しもうと自由です。

 もちろんトレーナーが作曲家やプロデュースもやるヴォーカルなら、
ステージも実践の場として与えられるのです。しかし、生徒と同じ舞台をやって、
完成度を下げるのは、続かない原因となります。
ヴォーカルはオンリー1で、かつナンバー1でなくてはやれません。
役者のように、オンリー1だけでは、やらせてもらえる場がないのです。
 スクール内イベントであるのに満足する人は、そこが合っているからよいのです。
しかし、そこでやっていけば将来が開かれていくと勘違いしてしまう人がいるので
困るのです。


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<今週のQ&A>


☆Q43.本番の直前なのに、注意されたことがまとまらず、自信がありません。
どうすればよいですか。何を考えればよいですか。

A.考えないのが一番よいのですが、どうしても考えてしまうなら、
一本通す一貫性とピークまでの構成、展開だけをイメージしておいてください。
部分よりは全体が優先です。全体が走って(あるいは流れて、この場合は
どちらもよい意味ですが)いてこそ、部分で効果が出るのです。

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