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第53号 2009.09.12

(5)私的トレーニング論

○声が悪いことの解消策

 一般の方には、「声がよくないので直したい」という人がよくいらっしゃいます。
しかし、これはあまり心配ないことが多いのです。その原因は、
1.まわりに厳しい人がいる
2.コンプレックスが声に向いている
3.自意識過剰、声は化粧できない
 あたりが、多いです。ヴォイトレ依存症にならないようにしましょう。
声の悩みは、誰でもあります。それを解決することで、一つずつよくなると思うのです。

○本当に身につけるということ

 「前のところではまったくうまくいかなかった。ここではとてもよくわかった、
いろんなことが身についた」という人がいます。でも、私は、その喜びに水をさす
つもりではありませんが、「身についた」ということは、「世の中に通用している
ということでみないと、自分自身で、誤解してしまいますよ」と言います。
そして、「前にあなたがいたところでも身についた人もいるし、
ここでも身につかなかった人もいる」と加えます。

 トレーニングは相性もタイミングもあれば、その人自身の取り組みや努力にも
大きくよるからです。それに「また1、2年たったら、あなたは『ここでは身につかない』
と次のところへ移り、そこでまた同じことを言うかも。」と思ってしまうこともあります。
 でも私は、それを悪いこととは思いません。身につかないというのは、
本当にだめなときもありますが、あなたのレベルがあがって、さらに高いレベルや、
より絞られた目的のレッスンを求めるようになるときもあるからです。
そしたら、また学べるところへ行けばよいのです。

 私は、プロを10年から30年やってきている人をもレッスンしています。
彼らは私を使えているから、続けているのでしょう。それだけのことなのです。
(その私と合わないという人がいても、おかしいことではないのです。)
 なぜなら、本当に世の中でやれた人は、身につくとか身につかないなどという
ようなことでは、語らないからです。つまり、自らやるからです。
 そこに自分が足らないものに気づき、そこを補うために、その才能のある人を
使うからです。目的がはっきりしているから、人を選ぶにも間違えません。
だからプロになれたし、プロであり続けられるのです。こういう考え方をもてると
いうことの方が、よほど大変かつ大切なのです。

 トレーニングが目的のうちは、身につくとか、つかないとかで、バタバタして
しまうものです。世の中でやっている人は、身についていようが身についていなかろうが、
やっています。充分に身についていないことを知っているから、学び続けています。
というよりも、そこでやり続けられている人こそが、身につけているということなのです。
 そういう人は、何も言いません。そんなことは、問わないからです。
問うても仕方のないことだからです。やっている、やれている、その事実がすべてです。
長くやっていけるために、自らトレーニングするのです。
そんなことを言っている人には、構わないこと、あなたの人生の浪費です。

○どう才能を見い出すか

 いかにすれば、ヴォーカリストを教えられるか、という点で、ポピュラーというのは、
本当は形がないから、教えることが成り立ちにくいのです(クラシック、ジャズ、
ラテン、シャンソンなどなら、経験を積んだ人が何とかスタンダードを伝える形で
レッスンも成り立ちやすい)。
 教えるとすれば、まず教えるべきヴォーカリストの理想像や、上達した姿、
目標とする歌のよさというのを決めなくてはいけません。
 トレーニングは、何に対して効果をあげるのかを明確にしなくてはいけません。
成果をあげることを目的にやるものだからです。そのために、相手に応じて対処して
いくことが疎かになりやすいのです。

 これには、大変な努力を必要とします。初心者に対し、
その人がヴォーカリストとして世の中に通用する価値の部分を認めて、
それを育てていくとしたら、教える人の力も、相当高度なものが要求されます。
 特に、発声と歌(これは歌い方でなく、表現としてのオリジナリティ)と、
両方みるのは大変です。発声以上に関わらないというトレーナーもいますが、
すると、声楽が第一基準になりかねません。

○トレーニングの期間について

 私は、一般的に声を使うのに、毎日トレーニングしても最低二年はかかるという
立場を明確にしています。これでも早すぎると思っています。三ヵ月や半年でできる
ヴォイストレーニングはたんなる調整にすぎないと思っています。
ましてや、そのくらいの期間でプロになれるなどということは、考えるだけでも
おかしなことでしょう。
 役者さんや学校の先生など声を使う職業に関しても、最近は声をうまく出すことが
できず、現場では多くの問題が引き起こされています。プロとして声を使うには、
それなりの鍛錬をある期間に継続することが大切なことです。

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