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第56号 2009.10.31

○レッスンは、身体感覚への気づき

 それで何が思い浮かぶか、そして自分が他のいろんなものとどう結びつけられるか、
そのきっかけを与えるのが、レッスンだと思います。つまり、レッスンのレベルは、
メニュやノウハウでなく、受け手の能力、感受性に、全面的によるのです。
トレーナーのことばは、そのためのきっかけ、必要悪です。

 たとえば、今日の課題をみんなで一緒に読んでみるのは、それぞれでやった方が
よくできることです。私は、研究所ではそこでしかできないことをやるようにしています。
自分でできることは自分でやるべきだからです。
 自分でやるべきことをやってあげるのは、もっと大切なものを失うことになります。
レッスンのレベルが、ここのレッスンでなく、とりくみのレッスンとなる。

 それも必要と思ってもみましたが、一度そこに下げると、戻らない。ずっと自主性、
主体性、ポジティブに読み込む力を抑えてしまう。しかも、教えてもらうのが
レッスンだと思わせてしまう。これは最大の誤りです。しかし、そういうトレーナーや
レッスンが、日本では求められる、そういう精神性もよくわかってきました☆☆☆。

 そして、わからないよりはわかるように、やめて来なくなるよりは続けさせるように、
あたりまえですがそうならざるをえません。つまりトレーナーは、仕事としては、
私の考える理想などよりも現実、将来の可能性よりも現在の相手の求めるところに
応じなくてはならないから、そうなります。つまり、そういう意味で職務に忠実で
有能なトレーナーほど、客として相手に満足してもらうことはできるが、
人は育てられないとなります。
 教え方がていねいで、評判のよい歌い手などについて伸びないのも、だいたいは
そのためです。

 自分は苦労させたから楽させたい。だから、ノウハウやマニュアルを与えて、
ショートカットさせようとします。その苦労(それも真剣ゆえに楽しめるもの)の
醍醐味を伝えません。一人一途に、自分の声や歌の研究に没頭する、
その忍耐こそ、ステージの華やかさの代償であるのです。もちろん、忍耐のみに
至福を求めるのは、大きな過ちなのですが。ともかく結果のみ、熱意や金銭で、
あたかも技術が渡せるかのように思わせます。

 それは、本当に伸びるには間違いです。そういうトレーナーに限って、相手のことを
考え、手とり足とり教えていると思い込んでいくのです。その自己満足で、人は育ちません。
だから、無能な子分がたくさんできるのです。日本ではそれを人望のようにあがめるから、
尚さら両者とも何も疑問をもたなくなるのです。

 金も時間も必要条件にはならないのです。時間は才能の不足を補ってくれるし、
お金は時間の不足を補う面はあります。
 厳しいレベルでのトレーニングが本来、1パーセントの人に10年経てしか
本当の効果があがらなかったのを、10パーセントの人に5年であげられる、
そのためにやるべきものであったとしたら、その本質を誤って、みせることとなります
(もちろん100パーセントの人に、平均点より少し上にという効果をもって、
上達というような低レベルの成果をここでは問わないとして)。

 ヴォーカルの場合、効果や目標そのものがあいまいなことが、迷いのなかで
無駄な日々を送ることになりやすい一因です。そこで、本音を言わず、というより、
当人同士が共によい関係性の維持のために、本質や事実や真実に目が曇って
いきやすいのです。トレーナーとの心地よいコミュニケーションで少しずつ大切な時間が
失われます。やがて自分の才能がないという理由を自覚して、誰かの応援団として
人生を送るに至ります。つまり、一巡して元に戻っただけなのです。
それはまさに、多くのトレーナーの小体験をしたということになります。

 そうでない人は、トレーニングをやめ、現実に立ち還ってバンド活動をやるでしょう。
しかし、そもそもその厳しい現実のために日々のトレーニングが欠かせぬはずなのに、
おかしなことです。身内だけのまえで歌っていれば、何か成している錯覚のなかで、
時は流れます。あこがれの人が歌で偉大だったから、自分も歌っていることが偉いと
でも思っているのでは、同じ逃げの構図となります。

 さらにもっとも大きな誤りとなるのは、ある程度、できた人が教えるために
他人のノウハウや方法を受け売りする場合です。半年や1年の試行にも関わらず、
その人は応用できる力があるからできてしまう。でも、それを教えられた方は、
ずっと下のレベルですから、さらに未消化で、いつまでも本質は変わらないのです。
長くやるに従って、ヴォイストレーニング、発声コレクターとなります☆。
基本のつくりを忘れ、応用の応用をやっているから、尚さらそうなります。
トレーナー自身、自分の程度に、いや、その半分もできたら上出来という姿勢に
なってしまうのです。


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<今月のQ&A>

Q48.先生を選ぶときには、志向レベルやセンス、感性というものに共通点を
多く見い出せる先生のほうが、レッスンの向上には有効なのでしょうか。

A.一般的にはそう思われますが、必ずしもそうだとは言い切れません。


Q49.ヴォイトレでこれまでのトレーニングをリセットしてからやり直すのは、正しいのですか。

A.何ともいえません。ケースバイケースです。ともかく理想的なヴォイトレは、
生まれてからこれまでのことをきちんと再体験して、深く気づき、学んでいこうという
プロセスだと私は考えています。

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