第68号 2010.04.24 ○なぜ声優、役者が来るようになったのか

○なぜ声優、役者が来るようになったのか

 ヴォーカルの声はしだいに浅く、小さく生声になり、かつてのように、話す声、地の声でプロとわかるどころか、素人以下になりつつあります。第一の原因は、誰もが無理にハイトーンへ音域を伸ばしてきたからです。そういう要求に、すぐに対応してしまうトレーナーが増えました。
 それに対し、ブレスヴォイストレーニングは、役者や声優の荒っぽい大声づくりで、声を損ねて悩んでいる卵たち(やプロ)に、もてはやされています。歌手は、本格志向の人中心でしょうか。お笑い芸人や落語家の方が、歌手よりも地として強く、太く、インパクトのある声が求められるようになってきたせいでしょう。
 むしろ今は、トレーナーすべてがリスクを避け、のどに安全な方向へ導きます。それゆえ何ら声として鍛えられないのです(声のトレーニングなど眼中にないトレーナーが多くなったのは、そのトレーナーの声か、その人に教わった人の声を聞くとわかります)。

 私は当初、声そのものを鍛えるためにブレスヴォイストレーニングを提唱していたのです。ところが、歌手なのにあまりに音楽的感覚の不足から、声を損ねる人をみてきました。そこで、音楽フレージング感覚を吸収できる方法をメニューに入れました。
 そこで私は声楽家と組むようにしたのです。
 さらにトレーナーには、次のような観点を与えています。
a 自らの声やその成長プロセスをすべて理想としないこと
b 全く違うのどやタイプに対しての方法の限界を知り、他の方法にも可能性を探ること
c どんな方法であれ、できることを深めさせ、その判断力をつけさせること

○基礎のトレーニングとは

 そもそも表現のためのヴォイストレーニングなのに、ヴォイストレーニングそのものを目的とする人が日本人に多くなってきたことです。本当にそれでよいのでしょうか。
 トレーニングであるからには、さまざまな目的、レベル、プロセスを踏まえて、考えていかなくてはなりません。ざっとみても、私のところにいらっしゃる方でも、次のような違いがあります。少なくとも1~5については、ご自身で考える必要があります。

1.体、のどの違い 民族の違い
2.育ち、成長の違い 時代の違い
3.言語、発声の違い 母語、リズムの違い
4.日常レベルの声の違い
5.歌唱での声の使い方 優先度の違い
6.音響(リバーヴ、マイク、会場、レコーディング)環境の違い

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<今月のQ&A>

Q72.主体性をもってといわれますが、具体的にどうすればよいのですか。
 
A.すべてのレッスンは、自分への気づき、発見の材料としてあります。うまくいかない人は、これまでうまくいかなかったのが自分の考え方や意識のせいだと考えずに、トレーナーに一方的にすべてを教えてもらおうと、他人依存になりがちです。ですから、自分の体のしぜんなコントロールをできないようになります。教えてもらおうとすることで、本当に心身に素直になれなくなるのです。
 一方、うまくいっている人は、トレーナーを自分の思い込みからの解放のために、使おうとしています。トレーナーは、何よりもあなた自身(の声)を客観視するためのパートナーなのです。

Q73.トレーナーにあれこれ、考えるまもなく、注意されます。本当にこれでよいのですか。やめようと思うのですが、やめさせてくれません。
 
A.トレーナーにも教えたがりの人がたくさんいます。あたかも自分が完全見本のように、自分より下手な相手に教えることで、自己満足する輩です。それは自らの存在の実感を得たいからです。教育熱は大切ですが、それが高じて、相手を自分のワクの中に閉じ込めてしまうことが多いので、気をつけるべきです。
本当に自信のあるトレーナーは、誰か他の人にでも任せられるし、むしろよりその人にもっとも合う人をプロデュースするでしょう。自分でないと相手を伸ばせないなどと、うぬぼれることもないでしょう。