第69号 2010.05.08 ○カンツォーネ歌唱について  ~イタリア語の使用

カンツォーネ歌唱について  ~イタリア語の使用

 日本語はもとより、英語よりもイタリア語が発声に使いたいのは、いろんな理由がありますが、第一に使いやすい、第二に意味のわからないのがとても好ましいのです。
 音声を楽器レベルで使おうとするブレスヴォイストレーニングのレベルでは、歌詞やストーリーがあまりに重点をおくと、音色とフレーズのデッサンという音楽的奏法への関心が失われます。ただでさえ、日本人は詞、ことばの方に傾倒しやすいし、そのうえ、欧米から近代音楽が輸入されたコピーを身上としてきた経緯もあります。つまり、歌では音色での表現があまりにも問われなかったのです。

 そのために、まず私がレッスンに取り入れたのは、大曲(声域や声量において、素人離れした歌唱力を要するもの)でした。コンコーネ50といった発声教本とともに、イタリア語歌曲集、さらにナポリ民謡、カンツォーネでした。(これはその後、シャンソン、ファド、ラテンとつながります)
 日常レベルを超えて、2オクターブを全身からの声で歌い上げるところに、プロとしての体やのどの条件をもってくるのが、トレーニングで鍛える声のあり方として、もっともわかりやすかったからです。

○音大生の歌唱にみる感覚と体づくり

 日本の音楽大学は、日本の近代歌唱の入り口となりました。音大生がともかくも、体や感覚の条件を国際レベルに変える努力をして、発声をマスターしていく、実験台として存在していたのは事実です。彼らが日本語での歌唱は難しく、イタリア語の方が楽に、声が声域、声量ともとれるというのですから、そこに声づくりのベースをおくのも一理あるのです。
 もちろん、日本人の一流のオペラ歌手も、日本語での歌唱を原語よりも苦手としています。ヨーロッパの現地では、よく声が響くのに、湿潤な日本では、のどの調子を壊しやすいのも衆知のことです。このあたりは木製楽器の管理の難しさとも似ています。
 音声、楽器演奏面からアプローチするのなら、イタリア歌曲の歌唱は、次の面で導入として最適なのです。

 1.日本人の感覚を切れる
 2.日本人の体を切れる
 3.西欧からの歌唱にストレートに入れる
 4.クラシック、声楽の方法がそのまま使える
 5.(アジアも含め)全世界で、教育の成果あげている

 さらに、カンツォーネになると、
 1.ポップスの感覚(メロディ、リズム、コード、進行展開)である
 2.オペラに比べ短く、歌のエッセンスが入っている
 3.親しみやすく、わかりやすく、覚えやすい

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<今月のQ&A>

Q74.演奏に耐える歌とはどんなものでしょうか。

A.切り込んだあとにどう情感をおいていくか、違和感をどう聞く人の心に結果としてフィットさせるのか、そこで自分が心地よかったことを拡大して、それを中心に展開するプロセスを再構築する。説得し、納得させ、感動させる。形をとり去って、はじめて聞いた人にも名曲と感じさせることです。名曲のよさや勢いを想い出させるのでなく、新たに創りあげることです。
 創造性のなさを棚に上げて、日本では表面ばかりみて歌っていることが多いです。どこに音色、ニュアンス、「音楽」が出ているのかを私は聞きたいのです。

Q75.デモCDをもっていてよいですか。

A.トレーナーは、持ち込みデモテープも歓迎しています。誰よりもまじめに聞き、ヒントを与えるように聞くこと、レッスンのスタンスは、そこになくてはなりません。